※本記事は、社会保険労務士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景
東成区は古くからの住宅街が広がり、世代を超えて住み続ける家庭が多い地域です。子育て世代と高齢世代が同居するケースも少なくなく、介護と子育てが同時に発生するダブルケアが社会的な問題として顕在化しています。飲食店にとっては、こうした従業員の家庭事情に柔軟に対応できるか否かが人材定着のカギとなります。
この居酒屋でも、従業員のうち2名がダブルケアを抱えており、子どもの学校行事や体調不良、親の通院付き添いや介護サービス調整などで突発的に休みを取る必要がありました。そのたびにシフトが崩れ、店長や経営者が自ら現場に立たざるを得ない状況が続きました。従業員本人も「迷惑をかけている」と精神的負担を抱え、退職を考えるまで追い込まれていました。経営者は「ダブルケアに対応できる制度を整えなければ人材を守れない」と判断し、両立支援等助成金を活用して改善に乗り出しました。
社労士のポイント解説
申請準備では、ダブルケアを抱える従業員の勤務実態をヒアリングし、課題を数値化しました。突発的な休みが月平均4回発生しており、店長のシフト調整業務が月20時間以上に及んでいたことを明確にしました。これを根拠に助成金の必要性を示しました。
導入した施策は、育児休業制度と介護休暇制度を組み合わせ、分割取得できるように整備した点に特徴があります。子どもの看護休暇については最新の法改正に対応し、小学校3年生までを対象に学級閉鎖や入学行事でも取得可能としました。介護については短時間勤務制度と時差出勤制度を導入し、親の通院や介護サービスの利用に合わせて勤務を調整できるようにしました。
さらに、シフト管理アプリを導入し、従業員が勤務可能時間を事前に入力できる仕組みを整えました。これにより、店長が突発的な欠員対応に追われる時間を大幅に削減できました。
助成金については、柔軟な働き方選択制度コースを利用し、短時間勤務制度と看護休暇制度、介護対応のシフト調整を導入・運用したことで25万円を受給しました。また、介護休業を分割取得した従業員に代替要員を確保したことで「育休中等業務代替支援コース」から10万円を受給し、合計35万円が支給されました。受給した資金はシフト管理システム導入費や研修費に充当されました。
さらに、2025年法改正の「個別周知・意向確認義務」にも対応し、子育てと介護両方の対象者に対して必ず制度の説明と意向確認を行いました。テレワーク制度も一部導入し、事務作業を在宅で可能にすることで、従業員が介護や子育ての合間に働ける環境を整えました。
解決イメージ
制度導入後、ダブルケアを抱える従業員は子どもの学校行事や体調不良、親の通院などに安心して対応できるようになり、退職せずに働き続けることができました。従業員からは「仕事を辞めずに家庭と両立できるのはありがたい」「理解ある制度があることで精神的に楽になった」との声が寄せられました。
店舗全体としても、従業員の離職率は導入前の18%から7%に低下し、定着率が大幅に改善しました。顧客からも「顔なじみのスタッフが安定しているので安心できる」と評価され、リピーター率の上昇につながりました。
店長のシフト調整業務は月20時間から8時間に短縮され、経営者は新規メニュー開発や販促活動に時間を割けるようになりました。助成金で受給した35万円はシステム導入や従業員研修に活用され、制度は形骸化せず現場で定着しました。
このように、大阪市東成区における両立支援等助成金の活用は、介護と子育てのダブルケアに直面する従業員を支え、飲食店経営を安定させる効果的な手段となりました。本モデルケースは、今後ダブルケア問題に直面する飲食業界にとって貴重な参考事例となるでしょう。
