※本記事は、社会保険労務士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景
大正区は港湾労働や工場勤務者が多い地域であり、飲食店は彼らの生活を支える役割を担っています。長時間労働や夜間勤務に従事する顧客が多いため、飲食店は夜遅くまで営業することが多く、従業員の負担も大きくなりがちです。その中で従業員の家庭環境を考慮しないまま運営を続けると、長期的には離職率の上昇を招く危険性があります。
この焼肉店では、正社員の男性従業員が妻の出産を迎えるにあたり育休を希望しましたが、これまで男性従業員が育休を取得した前例はなく、経営者も「代わりがいない」という理由で取得をためらわせていました。その結果、従業員は不安を抱えながら仕事を続けることとなり、モチベーション低下の兆しが見え始めていました。経営者は「家族を大切にできる職場でなければ人材は定着しない」と考え、両立支援等助成金を活用して男性育休取得を後押しする制度を導入することを決断しました。
社労士のポイント解説
まず申請準備の段階で、男性育休取得に関する現状を整理しました。過去10年間で男性従業員の育休取得はゼロであり、従業員アンケートでは「育休が取れるなら利用したい」と回答した割合が60%を超えていました。これを申請書に盛り込み、育休制度が形骸化している現状を明らかにしました。
導入した制度は、育休取得対象者への個別周知と意向確認の徹底、代替要員確保の仕組み整備、そして育休取得後の円滑な復帰支援です。2025年10月から義務化される「個別周知・意向確認」については先行して導入し、対象従業員には制度の詳細を直接説明しました。代替要員についてはパート従業員のシフトを調整し、外部からの短期雇用も検討して対応しました。
助成金としては、男性正社員が1か月の育休を取得したことで「出生時両立支援コース」により20万円を受給しました。さらに、従業員の取得率が上昇したことにより、助成額が累積して追加の10万円も受給できました。合計で30万円が支給され、代替要員の人件費や育休者復帰後の研修費用に充てることができました。
加えて、育児休業法の最新改正に対応する形で、妻の出産前後の柔軟な育休分割取得にも制度を適合させました。これにより、従業員は連続してではなく、必要な時期に育休を分けて取得できるようになり、家庭と仕事の両立をより現実的に実現できるようになりました。
解決イメージ
制度導入後、男性従業員は1か月間の育休を安心して取得し、妻とともに新生児の育児に専念できました。復帰後は時差出勤制度も活用し、家庭と仕事の両立を実現できたことで、従業員のモチベーションは大幅に向上しました。従来なら「辞めざるを得ない」と考えていた従業員が定着し、店舗の安定運営につながりました。
従業員からは「経営者に理解があり、家庭を優先できる環境がありがたい」「長く働きたいと思える職場になった」との声が寄せられました。顧客からも「スタッフが安定している」「雰囲気が良くなった」との評価が得られ、リピーター率の上昇に直結しました。
助成金として受給した30万円は制度整備に必要なコストを補填し、残りは新規メニュー開発やスタッフ研修に充てられました。制度は単なる一時的な支援にとどまらず、職場文化を変える契機となり、経営者自身も「従業員の家族を大切にすることが結果的に経営改善につながる」と実感しました。
このように、大阪市大正区における両立支援等助成金の活用は、男性育休という新しい働き方を現場に根付かせ、人材定着と経営安定を同時に実現しました。男性従業員が育児に参加できる体制は飲食業界全体においても重要な課題であり、本モデルケースは地域全体での取り組み拡大に大きな意義を持つ事例といえます。
