※本記事は、社会保険労務士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景
港区は大阪市の中でも労働色の強いエリアであり、昼夜を問わず稼働する港湾や工場に勤務する人々が多く住んでいます。彼らを顧客とする飲食店では、朝から夜遅くまで営業する店舗が少なくなく、従業員シフトの柔軟性が重要です。しかし、従業員の多くが子育て世代である場合、突発的な子どもの体調不良や学校行事により勤務を休まざるを得ないことがしばしば発生します。これまでの運営体制では、店長が電話やLINEを駆使して急な欠員を埋めるために奔走していました。
また、従業員からも「急に子どもの体調が悪くなった時に気軽に休みを言い出せない」「学校行事に参加したいがシフトに迷惑をかけたくない」といった声が寄せられており、結果として離職やモチベーション低下につながるケースがありました。経営者は、制度の導入と仕組みの整備により、従業員が安心して子育てと仕事を両立できる環境をつくる必要性を強く感じていました。
社労士のポイント解説
両立支援等助成金の申請にあたっては、まず現状を数値で整理しました。過去2年間で子育てを理由とした短期離職が2名発生し、シフト調整に店長が1日平均30分、月換算で15時間以上を費やしていた実態を提示しました。また、従業員アンケートでは「急な休みに対応できる体制があれば働き続けられる」と回答した人が全体の半数以上にのぼり、制度導入の必要性が裏付けられました。
導入したのは、最新の育児・介護休業法改正に即した「子の看護休暇制度」と、シフト柔軟化を可能にするシステムです。看護休暇については、小学校3年生までを対象とし、1人につき年5日、2人以上で年10日まで取得可能としました。これにより、学級閉鎖や入園・入学式といった場面にも対応できるようにしました。また、シフト柔軟化については、従業員がスマートフォンアプリから勤務希望や休暇申請を提出できる仕組みを導入し、店長はアプリ上で欠員状況をリアルタイムに把握できるようになりました。
助成金額としては、柔軟な働き方選択制度コースを利用し、シフト柔軟化と看護休暇制度という2種類の制度を導入し実際に利用されたことから、20万円が支給されました。さらに、従業員の制度利用率が高かったことから追加支給が認められ、最終的に25万円を受給しました。この金額はシフト管理アプリの導入費用や従業員研修費に充てられ、制度の定着を後押ししました。
また、2025年の法改正により義務化される個別周知・意向確認についても先行して導入し、対象従業員には必ず個別に制度説明と意向確認を行う体制を整えました。これにより、助成金要件を満たすだけでなく、従業員に安心感を与えることができました。
解決イメージ
制度導入後、子どもの体調不良で休みを必要とする従業員が実際に看護休暇を利用し、周囲に迷惑をかけることなく勤務を調整できるようになりました。これにより「制度があることで心理的な安心感がある」との声が上がり、従業員のモチベーションが向上しました。結果として、従業員の離職率は導入前の15%から6%に低下し、人材の定着が進みました。
顧客からも「いつも同じスタッフが対応してくれるので安心感がある」「接客の雰囲気が落ち着いて利用しやすい」といった声が寄せられ、リピート率が向上しました。店長のシフト調整業務は従来の月15時間から5時間に短縮され、余剰時間を新メニュー開発や販促活動に充てることができ、売上増加にも寄与しました。
助成金として受給した25万円はアプリ導入費用やマニュアル作成費用に活用され、制度は形骸化せず現場で実効性を発揮しています。看護休暇とシフト柔軟化を組み合わせた今回の取り組みは、従業員の安心と顧客の満足を同時に高め、経営者にとっても業務効率化と収益改善を実現する好例となりました。
