※本記事は、社会保険労務士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景
西区は新しいマンション群と古くからの住宅街が混在する地域であり、幅広い世代が暮らしています。飲食店においても常連客や会社員のランチ需要、夜の観光客需要など多様なニーズがあり、安定的な人員配置が不可欠です。しかし、近年は従業員の親が高齢化し、介護を理由とした離職が増えています。
この和食料理店でも、過去5年間で介護を理由に2名が退職しました。いずれも40代のベテランであり、調理や接客の中心を担っていたため、店舗運営に大きな影響を与えました。新規採用も難しく、採用できても教育に時間がかかり、顧客から「接客の質が落ちた」との声が寄せられるなど、経営に直接的な悪影響が出ていました。経営者はこのままでは優秀な中堅層を失い続けると判断し、両立支援等助成金を活用して介護支援制度を導入することを決意しました。
社労士のポイント解説
まず申請準備として、介護を理由とした退職者数、管理者がシフト調整に費やした時間、介護を抱える従業員の割合を明確にしました。具体的には、従業員12名のうち40%が介護世代に該当し、過去5年間で2名が介護離職した実績を整理しました。これをもとに助成金の必要性を強調しました。
導入した制度は、介護休業の取得支援、介護短時間勤務制度の導入、柔軟な時差出勤制度の新設、さらに代替要員確保体制の構築です。介護休業は法定の93日間を前提に社内規程を整備し、取得者が安心して利用できる体制を整えました。短時間勤務制度は、介護の必要がある従業員に対して1日6時間勤務を選択可能にし、週単位のシフト調整も柔軟に対応できる仕組みとしました。また、時差出勤を認めることで、朝の通院や介護サービス利用に合わせた勤務が可能となりました。
さらに、代替要員確保策として人材派遣会社と契約し、急な介護休業にも対応できる仕組みを整えました。これにより、店舗運営の安定性を確保しました。
助成金の具体的な支給額としては、介護休業を利用した従業員1名に対し、業務代替支援コースを活用し、代替要員の雇用にかかった費用の一部が補填されました。具体的には、派遣社員を3か月間雇用し、1か月あたり10万円、計30万円の助成金を受給しました。さらに、短時間勤務制度と時差出勤制度を導入し、実際に従業員が利用したことで「柔軟な働き方選択制度コース」により20万円が支給されました。合計50万円の助成金を受給し、制度導入コストを大幅に軽減することができました。
また、2025年の法改正内容にも適合させました。対象従業員に対する個別周知・意向確認を義務として取り入れ、介護休業取得可能者には必ず説明と確認を実施しました。さらに、3歳未満の子に限らず、介護従業員にもテレワーク制度を応用し、発注業務や書類作成を在宅で行える仕組みを整備しました。これにより、制度が現実的に運用される体制を築きました。
解決イメージ
制度導入後、介護を担う正社員が安心して介護休業を取得し、復帰後は短時間勤務と時差出勤を利用しながら継続勤務することができました。従来なら離職していた人材を維持できたことは、店舗にとって非常に大きな成果です。従業員全体の離職率は導入前の17%から6%に低下し、定着率が飛躍的に向上しました。
従業員からは「介護と仕事を両立できる制度があることで安心できる」「職場に理解があり、長く働ける」との声が寄せられました。顧客からも「スタッフが安定していて安心」「接客の質が以前より落ち着いている」との評価が得られ、リピート率の上昇につながりました。
さらに、シフト調整にかかる店長の業務時間は月20時間から8時間に減少しました。経営者は余剰時間を新規顧客獲得や販促活動に充てることができ、結果として売上の増加につながりました。助成金として受給した50万円はシステム導入費用や研修費用に充当され、店舗の持続的成長を支える投資へとつながりました。
このように、大阪市西区における両立支援等助成金の活用は、介護と仕事の両立を現実的に可能にし、従業員の定着、顧客満足度向上、経営効率化を同時に実現しました。子育てだけでなく介護にも目を向けた制度導入は、今後の飲食業界における重要な取り組みであり、本モデルケースは有効な参考事例となります。
