※本記事は、社会保険労務士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景
此花区は観光地としての側面と下町の生活圏という二つの顔を持つ地域です。週末や大型連休には観光客が押し寄せ、平日は地元住民が日常的に飲食店を利用するため、幅広い客層に対応する柔軟なサービスが求められます。しかし、飲食店業界は慢性的な人手不足が課題であり、特に子育て世代の従業員が家庭の事情で離職するケースは大きな痛手となります。
この食堂でも、過去5年間で子育てを理由に3名の従業員が退職しており、そのたびに新規採用と教育に時間とコストがかかっていました。店長はシフト調整に追われ、1日あたり30分以上を調整業務に費やしており、本来注力すべき経営改善や新規メニュー開発に時間を割けない状況にありました。顧客からも「スタッフが頻繁に入れ替わるため落ち着かない」という声が寄せられており、経営者は人材定着の仕組みづくりを急務と捉えました。
そこで、両立支援等助成金を活用し、制度整備と環境改善を同時に進めることを決断しました。
社労士のポイント解説
まず、申請準備にあたっては現状の課題をデータ化しました。過去5年間で子育てを理由に3名退職した実績、シフト調整にかかる店長の業務時間が月15時間以上に達していたこと、そして従業員アンケートで「育児との両立が難しい」と回答した人が全体の40%に上ったことを明確にしました。これらを基に申請書を作成し、助成金活用の必要性を裏付けました。
導入した取り組みは、育児休業の取得促進、短時間勤務制度の新設、柔軟な時差出勤制度の導入、そして代替要員確保体制の整備です。特に短時間勤務制度は子どもが3歳になるまで利用可能とし、復帰後の不安を軽減しました。また、勤務希望をスマートフォンから申請できるシフト管理アプリを導入し、経営者と従業員双方の負担を軽くしました。
最新の法改正にも適合させました。2025年4月から努力義務化された「3歳未満の子を育てる従業員へのテレワーク制度導入」については、在宅で可能な事務作業や発注業務を切り分け、対象従業員に活用できる仕組みを導入しました。また、看護休暇は最新の改正で小学校3年生まで対象が拡大されたため、規程を改定して学級閉鎖や入園式・入学式にも対応可能としました。さらに、2025年10月から義務化される「個別周知・意向確認」についても先行して制度化し、育児休業対象者には必ず個別に制度説明と意向確認を行う体制を整えました。
助成金の具体的な支給額も重要なポイントです。本ケースでは、育児休業を男性従業員が取得したことで「出生時両立支援コース」により20万円が支給されました。さらに、短時間勤務制度と時差出勤制度を組み合わせたことで「柔軟な働き方選択制度コース」により20万円が追加支給されました。合計で40万円の助成金を受給することができ、制度導入コストの一部を補うことができました。
このように、申請に際しては単なる制度導入ではなく、最新の法改正を織り込み、助成金制度の複数コースを組み合わせて最大限の効果を得ることが重要となります。
解決イメージ
制度導入の結果、出産を控えていた正社員スタッフが安心して育児休業を取得し、復帰後は短時間勤務制度を利用しながら働き続けることができました。従来であれば退職につながっていたケースを防ぎ、優秀な人材を維持できたことは大きな成果です。従業員全体の離職率は導入前の18%から7%に低下し、安定した運営が可能となりました。
従業員からは「制度が整っていることで安心して働ける」「子育てを理解してもらえる職場なので長く続けたい」といった声が上がりました。顧客からも「スタッフが安定していて安心感がある」「接客が以前より落ち着いている」と評価され、リピーターの増加につながりました。
また、シフト管理アプリ導入により店長の調整業務は月15時間から5時間に減少し、経営者は経営戦略や新規メニュー開発に集中できるようになりました。助成金による支給総額40万円は設備導入や研修に充てられ、店舗の成長につながる投資へと結実しました。
結果として、両立支援等助成金を活用した本取り組みは、従業員の定着率改善、顧客満足度向上、経営効率化を同時に実現しました。大阪市此花区における飲食店経営者にとって、本モデルケースは制度活用と最新法改正への適合を両立させた参考事例として大いに価値があるでしょう。
