※本記事は、社会保険労務士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景
生野区はコリアンタウンを中心に国際色豊かな食文化が根付いており、韓国料理や多国籍料理を提供する店舗が数多く存在します。休日には観光客も訪れるため、飲食店は常に一定の集客を見込める地域です。しかし、こうした飲食店の多くは長年営業を続けているため、冷蔵設備の老朽化が大きな課題となっています。
本ケースの韓国料理店は、20年以上地域住民に愛されてきた老舗店です。しかし、導入から20年を超える冷蔵庫は温度管理が不安定で、野菜や肉類の鮮度が落ちるケースが増えていました。月平均で約2万5000円分の食材を廃棄せざるを得ず、経営に打撃を与えていました。さらに、庫内の霜取り作業や食材探しに時間を費やすことが従業員の負担となり、業務効率が低下していました。経営者は「食品ロス削減」「労務改善」「顧客満足度向上」を同時に実現するため、業務改善助成金の活用を決断しました。
社労士のポイント解説
助成金を申請するにあたっては、課題を数値化して明確にすることが重要です。本件では、月平均2万5000円の食品ロス、年間10万円近い修理費用、従業員1人あたり1日12分以上の食材探し時間といった具体的なデータを示しました。これらを基に、冷蔵設備更新によって生産性と労務環境の両面が改善されることを申請書に反映しました。
導入した冷蔵庫は省エネ性能を備え、自動霜取り機能と温度自動記録システムを搭載した最新機種です。棚の位置調整が可能で整理整頓が容易になり、庫内作業の効率が格段に向上しました。設置は休業日を利用し、営業への影響を最小限に抑えました。
さらに、導入後は従業員研修を実施しました。内容は先入れ先出しの徹底、定位置管理の強化、温度異常時の対応手順の周知などです。助成金の評価対象である「研修を通じた労務改善」を重視し、計画的に実施しました。
導入効果を持続させるために、食品ロス削減額、光熱費削減額、従業員の業務効率を定期的に測定しました。さらに、月1回の改善会議を設け、従業員の意見を反映させる仕組みを作りました。これにより、導入効果を継続的に高めることができました。
解決イメージ
冷蔵設備の更新によって、食品ロスは月平均2万5000円から7000円未満に削減され、年間で約20万円のコスト削減を達成しました。従業員の食材探し時間も1日12分から4分に短縮され、調理や仕込みの効率が大幅に向上しました。これにより、ピークタイムの料理提供スピードが改善し、顧客満足度が高まりました。
従業員からは「霜取り作業がなくなり負担が減った」「庫内整理がしやすく作業が楽になった」との声が寄せられました。顧客からも「料理の鮮度が安定して美味しくなった」「提供がスムーズになった」との評価があり、リピート率が上昇しました。さらに、省エネ性能により月5000円前後の電気代削減が実現し、年間で6万円以上の経費削減につながりました。
このように、業務改善助成金を活用した冷蔵設備の更新は、経営改善と労務改善を同時に実現する効果を発揮しました。生野区における飲食店にとって、本モデルケースは非常に有効な参考事例であり、地域全体での助成金活用の広がりが期待されます。
