※本記事は、社会保険労務士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景
淀川区は新大阪駅を中心とした交通の要衝であり、観光客や出張中のビジネスマンが集まる一方、十三や塚本といった繁華街では地元住民を対象にした飲食店も賑わいを見せています。この多様な顧客層に対応するには、スピーディーな提供と安定した品質が欠かせません。本ケースのラーメン店も昼夜問わず来客が絶えない人気店ですが、25年以上前に導入した冷蔵庫は老朽化が進み、温度管理が不安定になっていました。その結果、スープの原材料やトッピング用の具材が傷んで廃棄になることが増え、月平均で3万円以上の食品ロスが発生していました。
さらに、庫内の整理が難しく、従業員が食材を探すのに時間を要することも問題でした。ピークタイムには調理の遅れが顧客満足度の低下を招き、従業員は残業を余儀なくされる状況でした。経営者は「従業員の負担を軽減しつつ、料理の鮮度と提供スピードを維持する」ことを目標に掲げ、業務改善助成金の活用を決断しました。
社労士のポイント解説
助成金の申請にあたり、まずは現状の問題を数値化しました。月平均3万円の食品ロス、年間10万円以上の修理費用、従業員1人あたり1日15分以上の庫内整理時間といった具体的な数値を示し、改善の必要性を明確化しました。これにより、冷蔵設備更新が生産性向上と労務改善に直結することを証明できました。
導入設備には省エネ性能と自動温度記録機能を備えた最新型冷蔵庫を選定しました。整理がしやすい棚構造を持ち、食材を効率的に管理できる設計となっています。設置工事は店舗の休業日を利用して行い、営業への影響を最小限に抑えました。
導入後には従業員研修を行い、先入れ先出しの徹底、庫内定位置管理、温度異常時の対応手順を共有しました。助成金申請では「研修を通じた労務改善」が評価対象となるため、研修内容を計画的に実施したことが申請の大きなポイントとなりました。
さらに、導入効果を定着させるために定期的な効果測定を行いました。食品ロスの推移、光熱費の削減額、従業員の作業効率を数値化し、月1回の改善ミーティングでフィードバックを行いました。この仕組みにより、設備導入効果を持続的に最大化する体制を整えることができました。
解決イメージ
冷蔵庫更新の結果、食品ロスは月平均3万円から1万円未満へと削減され、年間で24万円以上のコスト削減を実現しました。修理費用も不要となり、経営面の安定につながりました。従業員の作業効率も向上し、食材探しにかかる時間は1日平均15分から5分へ短縮され、残業時間が削減されました。その結果、従業員の負担が軽減され、定着率の向上にもつながりました。
従業員からは「仕込みの効率が格段に良くなった」「冷蔵庫の管理が楽になり仕事がしやすい」といった声が上がりました。顧客からも「料理の鮮度が向上した」「提供が早くなった」との評価を得て、リピート率が向上しました。さらに、省エネ性能により月5000円前後の電気代削減が実現し、年間で6万円以上の経費削減を達成しました。
このように、業務改善助成金を活用した冷蔵設備更新は、経営改善・労務改善・顧客満足度向上の三拍子を揃えて実現しました。淀川区の飲食店にとって、本モデルケースは有効な参考事例であり、地域全体に助成金活用の波及効果をもたらすことが期待されます。
