※本記事は、社会保険労務士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景
東淀川区は交通の要衝である新大阪駅を擁し、オフィス街と住宅街が混在する地域です。駅周辺は昼夜を問わず人通りが多く、飲食店にとっては安定した集客が見込める一方、来客数が集中する時間帯には迅速なオペレーションが不可欠です。本ケースの居酒屋も駅近くで10年以上営業を続けており、会社員の仕事帰りや学生グループの利用で賑わう人気店です。
しかし、開業当初に導入した冷蔵庫は老朽化が進み、温度が安定せず保存していた食材が傷んで廃棄になるケースが増えていました。月平均で約2万円分の食材を廃棄せざるを得ず、経営を圧迫していました。さらに庫内整理が難しく、従業員が必要な食材を探す時間が増加し、調理や提供の遅れにつながっていました。ピークタイムには従業員同士の動線が重なり負担感が強まり、離職リスクも高まる状況でした。こうした課題を解決するため、業務改善助成金を活用して冷蔵設備の更新に踏み切ることとなりました。
社労士のポイント解説
申請準備段階では、現状の問題を具体的に数値で示すことが不可欠です。食品廃棄の金額、従業員が庫内整理に費やす時間、修理費用の累積をデータとして提示しました。年間で約24万円の食品ロス、年間5万円以上の修理費、従業員1人あたり1日10分以上の作業ロスがあることを示し、設備更新が労務改善と経営改善に直結することを明確化しました。
導入する冷蔵庫は省エネ性能が高く、庫内温度を自動で記録するシステムを備えた最新機種です。整理がしやすい棚構造を持ち、食材の定位置管理を徹底できる設計であるため、従業員の作業効率が大幅に改善されます。導入時には営業への影響を抑えるため、休日を利用して搬入・設置を行いました。
設備導入後には従業員研修を実施し、新しい管理ルールを共有しました。特に先入れ先出しの徹底、庫内の定位置管理、温度異常時の対応マニュアルを全員で確認しました。助成金申請においては「研修を通じた労務改善」が評価対象となるため、計画的に研修を実施したことが重要なポイントとなりました。
さらに、効果を定着させるために、食品ロス率や電気代の推移、従業員の作業効率を定期的に測定しました。月1回の改善ミーティングを行い、現場の声を改善策に反映することで導入効果を持続させました。
解決イメージ
冷蔵庫の更新により、食品ロスは月平均2万円から5千円未満に減少し、年間で18万円以上のコスト削減を実現しました。従業員が食材を探す時間は1日平均10分から3分に短縮され、仕込みや調理が効率化しました。その結果、ピークタイムの料理提供スピードが改善し、顧客満足度の向上につながりました。
従業員からは「庫内が整理しやすく作業が楽になった」「温度管理が自動化され安心できる」といった声が寄せられました。顧客からも「料理の鮮度が良くなった」「提供が早くなった」との評価があり、リピート率が向上しました。さらに、省エネ性能によって月々5000円程度の電気代削減が実現し、年間で6万円以上の経費削減につながりました。
このように、業務改善助成金を活用した冷蔵設備更新は、経営改善と労務改善を同時に達成し、東淀川区の飲食店経営者にとって有効な参考事例となりました。地域特性に合致した改善策として、他の店舗への波及効果も期待されます。
