※本記事は、社会保険労務士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景
この法人は心斎橋筋商店街に複数の店舗を運営し、アパレル販売や飲食店を中心に事業を展開していました。従業員の多くは学生アルバイトや主婦層のパートタイマーであり、販売や接客に長けた人材も存在していましたが、正社員登用の仕組みがなく、学業や家庭を優先して短期間で退職するケースが多く見られました。
また、契約社員は販売の中心的役割を果たしていましたが、長期的なキャリア形成が見えず、将来不安を理由に他社へ転職する人材が目立っていました。外国人スタッフも複数在籍していましたが、非正規のままでは待遇改善が難しく、長期定着には至りませんでした。経営者は「人材流動性を抑えないと教育コストばかりが膨らむ」と危機感を持ち、社労士に相談しました。
社労士のポイント解説
社労士がまず提案したのは、就業規則と賃金規程の見直しでした。正社員登用制度を明文化し、勤続年数や評価基準を明確にしました。勤続1年以上で業務評価が一定基準を満たした場合には正社員登用の対象となる仕組みを導入しました。
賃金規程を改定し、正社員転換の際には必ず5%以上の昇給を行うことをルール化しました。これによりキャリアアップ助成金の支給要件を満たしつつ、従業員のモチベーションを高めました。
契約社員から正社員、有期から無期、無期から正社員といった転換ルートを整備し、従業員にとってわかりやすいキャリアの道筋を提示しました。登用後は社会保険加入を必須とし、福利厚生を受けられる環境を整えました。
教育訓練制度も新設し、アパレル販売研修、飲食接客研修、外国人スタッフ向けの語学・文化研修を導入しました。これにより、正社員登用後もスキルアップが可能となり、現場の即戦力として活躍できる仕組みができました。
助成金申請については、登用から2か月以内に書類を提出するルールを確立しました。登用前6か月と登用後6か月の賃金比較を行い、助成金要件を確実に満たすようにしました。
解決イメージ
最終的にこの法人では、契約社員4名とアルバイト2名を正社員に登用しました。これによりキャリアアップ助成金の正社員化コースを申請し、総額で数百万円の助成金を受給しました。従業員にとっては「努力すれば正社員になれる」という安心感が生まれ、定着率が向上しました。
アパレル販売部門では、経験豊富な契約社員が正社員として安定した働き方を実現し、接客品質が向上しました。飲食部門ではアルバイトが正社員登用されたことで店舗運営が安定し、教育コストが減少しました。外国人スタッフも待遇改善を実感し、長期勤務への意欲が高まりました。
経営者は「助成金で制度導入の初期費用を補えた上に、人材定着と採用コスト削減の両立ができた」と評価しました。結果として、中央区というオフィスと商業が混在する地域において、キャリアアップ助成金の活用が企業の成長を支える有効な手段であることが示されました。
