※本記事は、社会保険労務士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景
大阪市中央区は、大阪経済の中心であり、地下鉄御堂筋線・堺筋線・長堀鶴見緑地線など複数の路線が交差する交通の要所です。アクセスの利便性から、新設法人や成長途上のベンチャーが次々にオフィスを構えています。特にIT関連、広告・デザイン、コンサルティングなどの業種が多く、少人数から急速に人員を増やす企業が目立ちます。
今回のモデルケース企業は、IT系のベンチャー企業で、従業員数は18名。創業当初は数名規模でスタートし、ここ数年で急速に人員を増やしました。リモートワークやフレックスタイム制を部分的に導入していましたが、制度として明文化していなかったため、従業員間で勤務ルールの解釈が食い違う場面が発生していました。たとえば、リモート勤務の在宅手当の支給基準が曖昧で、不満を持つ社員が出始めていました。
また、スタートアップ特有の長時間労働も課題となっていました。経営者は「成果主義」を意識していましたが、時間外労働の管理が曖昧で、いつ労基署から是正勧告を受けてもおかしくない状況でした。さらに、若手社員が多いためキャリア形成支援や教育研修制度に関する期待が高く、制度化されていない点が採用競争における弱点となっていました。こうした状況を背景に、社労士に就業規則の整備を依頼することになりました。
社労士のポイント解説
社労士として中央区のベンチャー企業を担当する際には、急成長企業特有の「制度の未整備」と「人材多様化」に対応する必要があります。まずは労働基準法に基づく必須記載事項(労働時間、休日、休憩、賃金、退職など)を明文化し、現場の実態と調和させることが出発点となります。
次に、リモート勤務やフレックスタイム制を正式に規程へ反映させました。具体的には、リモート勤務の対象者・利用申請方法・在宅手当の支給基準・労働時間管理の方法などを定め、従業員が安心して利用できるよう整備しました。これにより「上司ごとにルールが違う」という不満を解消できました。
さらに、時間外労働の上限を明記し、36協定の適切な締結を支援しました。ベンチャー企業では「やる気に任せた長時間労働」が常態化しがちですが、これを制度的に抑制することで、従業員の健康管理や離職防止につながります。
また、助成金の活用も意識しました。キャリアアップ助成金の正社員転換制度や人材開発支援助成金を利用できるよう、就業規則に研修制度や正社員登用制度を盛り込みました。大阪市中央区は若年層の採用が多いエリアであるため、教育制度を充実させることで採用力も強化できます。
さらに、セクハラ・パワハラ防止の規程も新設しました。デザインや広告など感性を重視する業種ではコミュニケーションが活発な反面、言動をめぐるトラブルが発生しやすいため、相談窓口や苦情処理手続を整えてリスクを最小化しました。
解決イメージ
最終的にこの企業では、社労士の関与により就業規則をゼロから作成しました。リモート勤務・フレックスタイム制の制度が明文化され、従業員は安心して柔軟な働き方を利用できるようになりました。これにより「不公平感」や「制度があいまいで利用しづらい」という不満は解消されました。
時間外労働についても、就業規則に基づく管理体制を導入したことで、長時間労働の常態化に歯止めがかかりました。健康面の不安が軽減され、従業員の定着率が改善しました。
さらに、正社員登用制度を活用してキャリアアップ助成金を受給することに成功しました。その資金を新入社員研修やスキルアップ研修に充てることで、従業員のスキル向上とモチベーションアップが実現しました。採用活動でも「教育制度が整っている企業」としての評価が高まり、応募者数が増加しました。
また、ハラスメント防止規程を導入したことで、従業員が安心して働ける環境が整いました。相談窓口を設置したことにより、問題が大きくなる前に対応できる体制が確立され、社内の信頼関係も改善しました。
結果として、この中央区のベンチャー企業は、法令順守・労務リスク低減・助成金活用・採用力向上という複数の成果を同時に達成しました。急成長を遂げるベンチャー企業にとって、就業規則の整備がいかに重要であるかを示す好例となりました。
