※本事例は個人情報の観点からモデルケースとして地域や一部内容を変更して記載しています。
想定される背景と経緯
大阪市住吉区苅田エリアの商店街内に位置する元カラオケ喫茶物件を利用して、静かで落ち着いた雰囲気のスナックを新たに開業しようとされたのが今回のご依頼者様です。年齢は60代で、かつては同じ場所でカラオケ喫茶を経営されていましたが、コロナ禍により一時閉店。その後、以前からの常連客の後押しもあり、再び店舗を活用したいという強い思いからスナックとしての再出発を決意されました。
物件自体はカラオケ設備が撤去されており、内装は間接照明を中心とした落ち着いた雰囲気。ご本人としては「接待は行わない」「普通の飲食店として営業する」という考えだったため、飲食店営業許可だけで十分と考えておられました。しかし、念のため当事務所に許認可に関する相談をされたことで、状況が一変します。
現地調査の結果、照度は7ルクス程度と風俗営業2号に該当する基準(10ルクス以下)を満たしており、無許可営業となるリスクが高いことが判明。このまま開業すれば違法状態となる可能性があることを説明した上で、正式に風俗営業2号許可の申請手続きに進む運びとなりました。
行政書士のポイント解説
風俗営業2号許可は「低照度で飲食をさせる営業」に該当する場合に必要となります。スナックやバーでは雰囲気づくりの一環として間接照明を使用することが多く、特に意識していないまま2号営業に該当しているケースが頻発しています。
今回のような居抜き物件では、内装をそのまま活かすケースが多いため、照度も既存の状態を引き継ぐ形になります。依頼者様は「暗くしているつもりはなかった」と話されていましたが、実測では7ルクス前後という数値となり、風営法上の許可が必須となる状況でした。
警察署とのやりとりでは、照度測定報告書に加え、接待を一切行わない旨の運営計画書、従業員教育マニュアル、物件の周辺に学校や保育施設が存在しないことを示すGIS地図など、複数の資料を準備。住吉警察署との事前相談では、過去の営業実態を踏まえた運営内容の説明も丁寧に行いました。
風俗営業2号の許可取得には約1か月を要しましたが、事前の調査と的確な準備により、審査はスムーズに進行しました。並行して保健所による飲食店営業許可の取得も行い、予定どおりの開業が実現しました。
解決イメージ
ご相談から開業までの流れは以下のように進みました。まず、内装・照明の状態を確認し、照度計で正確な測定を実施。風俗営業2号に該当することを踏まえて、営業計画の見直しと許可取得方針を策定しました。
次に、警察署に提出する各種図面を作成。これには方位・面積・構造・導線などを反映し、飲食店営業許可と整合性のある内容に統一。さらに、GIS地図を用いて許容エリアであることを示し、事前相談を通じて審査官とのコミュニケーションを取りながら、接待行為がない運営形態であることを強調しました。
結果として、申請からわずか28日で風俗営業2号許可が下り、同時に飲食店営業許可も取得。開業後も常連のお客様が徐々に戻りつつあり、静かな空間で安心して営業を続けられる環境が整いました。
「接待を伴わない、落ち着いたスナック」というスタイルを法的にクリアにしたことで、ご本人の理想とする営業スタイルが実現された好事例です。