※本記事は、行政書士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景と経緯
大阪市阿倍野区昭和町で、商店街の路面テナントを活用し、新たにスナックを開業しようとされたのは、50代の女性でした。依頼者様は長年、他店舗のスナックで働いてきた経験を持ち、「いつかは自分のお店を持ちたい」と思い続けてきたとのこと。物件契約後、すぐに開業に向けて動き出されたタイミングで、当事務所にご相談がありました。
当初のご希望は、「静かで落ち着いた雰囲気を大事にしたい」というもので、間接照明を多用し、照明はあえて暗めにする予定とのこと。そこで当方より、風営法の観点から照度の測定を提案し、実際の照明配置を想定した状態での計測を行いました。その結果、店内の照度はおおむね8ルクス前後で、風俗営業2号に該当する可能性が高いと判断されました。
この照度基準を満たす飲食店は、たとえ接待が一切ない場合でも、風俗営業2号許可が必要になります。依頼者様も、まさか自分の店舗が該当するとは思っていなかったようですが、法律上の要件と今後のリスクについて丁寧にご説明したところ、納得の上で正式に申請に踏み切られることになりました。
行政書士のポイント解説
「暗めの照明で落ち着いた空間をつくりたい」——これはスナック経営者からよく聞かれる希望ですが、この意識が風営法に該当する事態を招くことがあります。照度が10ルクスを下回ると、たとえ接待行為が一切なくても風俗営業2号に該当します。今回はこの照度基準を超えるか否かが焦点でした。
阿倍野区のように住宅街と商業施設が混在する地域では、近隣の目もあり、警察の対応が慎重になる傾向があります。そこで、天王寺警察署と事前に綿密な相談を実施。照度計での測定結果や、営業方針、接待行為がないことを明記した書面、カウンター配置や席数などの図面一式を用意して、しっかりと審査に備えました。
また、警察からの質疑応答に備えたシミュレーションも行い、事前に予想される質問や確認項目について、依頼者様と打ち合わせ。結果的に、申請から25日で許可が下り、同時に飲食店営業許可も取得できました。
このように、風俗営業2号と飲食店営業許可は、それぞれ別の所管と基準で審査されるため、並行して準備を進めるには高い精度の書類作成と調整が求められます。一括で対応することで、開業時の不安や手間を大きく軽減できる点が、専門家に依頼するメリットといえます。
解決イメージ
依頼から開業までは、以下のステップで進行しました。まず、依頼者様の営業方針を丁寧にヒアリングし、店舗のレイアウトに合わせた照度計測を実施。その結果、風営法に基づく2号許可の必要性が明らかになり、早期の方針転換が可能となりました。
続いて、物件周辺に保全対象施設がないことをGIS地図を用いて確認。警察署との事前相談で、構造図面、照度報告書、営業方針説明書などの書類一式を提出し、審査官との面談対応にも備えた説明資料を用意しました。接待を行わない旨も明確に打ち出し、正確で誠実な申請を徹底しました。
結果、申請から25日で風俗営業2号許可が交付され、保健所の手続きと合わせて店舗オープンに漕ぎ着けました。現在では地域の常連客が毎晩訪れる、静かで安心感のあるスナックとして営業が続いています。
落ち着いた雰囲気を追求した店舗づくりと、それに必要な許可の取得が一致した、非常に良いモデルケースです。