※本記事は、行政書士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景と経緯
今回ご相談いただいた方は、大阪府にあるスナックで長年勤務されていたベテランの女性でした。勤務していた店舗が閉店することになり、「それならば自分で店を持とう」と決意されたとのことです。タイミングよく、その閉店店舗の物件が引き続き使用可能な状態で残っていたため、内装や設備も活かしながら、許可を取得して新たに自分のお店として営業したいというご希望をお持ちでした。
当初はご自身で風俗営業の手続きを調べていたそうですが、「風俗営業」という言葉に対する印象や、法的なハードルに対する不安がぬぐえず、やはり専門家に相談した方が安心だと感じて、インターネット検索で当事務所にたどり着かれました。「河南町 風俗営業許可」で検索したところ、当事務所の事例紹介が複数ヒットし、「地元に強い事務所」として信頼できそうだと感じていただけたようです。
面談ではまず、スナック営業に必要な許可の種類、深夜酒類提供飲食店営業との違い、接待行為の範囲や定義などについて丁寧にご説明しました。また、既存店舗をそのまま使用するという計画のため、構造が現在の風営法に適合しているかを確認する必要があり、早い段階で現地調査を行いました。住宅と田畑が混在した地域で、都市部とは異なる立地判断や騒音への配慮など、独特の観点での調査が求められる地域であるため、その点も踏まえて準備を進めました。
行政書士のポイント解説
人口規模が小さく、風俗営業の申請事例が多くない地域では、警察署や自治体の担当者も慎重な対応を取ることが多く、事前準備とコミュニケーションの質が非常に重要です。今回も、まずは警察署への事前相談を徹底し、予定されている営業形態が「接待を伴う飲食店営業」に該当すること、またその内容が風営法の範囲内に収まっていることを明確に伝えるようにしました。
特に、申請内容が過剰になりすぎないよう注意を払いながらも、接待行為が確実に行われることを説明できるよう、運営予定のサービス内容についてお客様から丁寧にヒアリングし、書面で整理しました。風営法では接待の有無が許可要件に直結するため、この点のバランスを適切に保つことが重要となります。
また、既存の店舗については、レイアウトがやや古く、一部の壁や仕切りが視界を遮っている構造であったため、風営法に適合させるための軽微な改修が必要でした。お客様が以前からお付き合いのある内装業者と連携し、費用を抑えながらも必要な基準を満たす改修を短期間で実施することができました。
申請に必要な図面や資料としては、用途地域証明書、求積図、配置図、照明や音響設備の一覧、写真資料などを含めた一式を正確に整備し、申請時に一括で提出しました。担当警察官からは「非常にわかりやすく整理されている」との評価をいただき、補正も一切なくスムーズに受理されました。現地調査も予定通りに進み、結果的に予定よりも早く許可が下りることになりました。
解決イメージ
営業許可の取得後、お客様は「本当にここまで来られるとは思っていなかった」と笑顔で語っておられました。ご自身が勤務していた店舗を引き継ぐ形での開業ではありましたが、やはりオーナーとしてすべての責任を負う立場になることに対して、不安も大きかったようです。それでも、ひとつひとつの手続きを丁寧に理解しながら進めていくうちに、自信と覚悟が育っていかれたご様子でした。
お店は現在、リニューアルオープンという形で営業を開始しており、以前の常連さんも少しずつ戻ってきているとのことです。地域住民の多くは顔見知りであるため、静かな環境の中でも安定した集客が見込める状況にあります。お客様自身が地域との関係をとても大切にされていることもあり、ご近所からの理解や応援の声も多く聞かれるそうです。
こうした地域密着型のスナック営業は、都市部とは異なる価値を持ちます。地元に暮らす人々が気軽に立ち寄れ、安心して会話やお酒を楽しめる空間をつくることは、地域コミュニティの維持にもつながります。今後は定期的にイベントを開催したり、地元の特産品を活かしたメニューを提供したりする構想もあるとのことで、単なる営業許可の取得だけではなく、事業としての広がりが見込まれる案件となりました。