※本記事は、行政書士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景と経緯
ご依頼者様は地元で長年接客業をされてきた女性の方で、「地域の皆さんが集えるような温かな場所をつくりたい」という思いから、スナックの開業を目指して動き始められました。知人に紹介された空きテナントが条件に合いそうだったことから、開業準備を本格的に進める中で、営業形態によっては風俗営業1号許可が必要となることを知り、不安を感じながらも当事務所にご相談いただいたのが始まりです。
初回面談では、すでに候補物件があるとのことだったため、その物件が風営法上の許可対象区域に該当するかどうかを確認するところからスタートしました。都市計画区域外の地域が多く、用途地域未指定の場所が多数あるため、一般的な都市部と異なり、用途地域証明書を取得しただけでは判断がつかないケースが多く見受けられます。そこで、町役場の都市計画担当課および大阪府の都市整備部に照会を行い、該当物件の商業的用途適合性を正式に書面で確認しました。
また、保全対象施設(学校や病院など)が100メートル以内に存在しないことを確認するため、徒歩調査と地図確認、さらに町役場への照会も併せて実施しました。結果的に対象施設は確認されず、立地要件はすべてクリアすることができました。
物件は以前スナックとして使用されていた居抜きでしたが、照明の明るさ不足や間仕切りの視認性不備など、法令上求められる基準に満たない点が散見されました。カウンターやテーブル席後方の照度が20ルクス未満だったため、照明器具の交換や配置変更を提案し、基準を満たすように改修しました。さらに、間仕切りの高さを調整し、視認性を確保するために一部にミラーを設置するなどの構造改善も行いました。
図面類については、営業所平面図、求積図、照度分布図、音響設備図、避難経路図などをすべてCADにて正確に作成しました。申請時には、誓約書や営業概要書、住民票、用途地域確認書類、身分証明書、賃貸借契約書、使用承諾書、管理者選任届なども整備し、田尻町を通じて泉佐野警察署へ正式に申請を行いました。
その後、約30日で警察署より立入検査の連絡があり、行政書士が同行して検査に立ち会いました。照度や構造、音響設備、避難経路などの確認が行われましたが、事前の準備が万全だったため大きな指摘もなく、スムーズに検査を終え、約10日後に風俗営業1号許可証が交付されました。さらにその後、飲食店営業許可の取得、消防署への届出、税務署・年金事務所・労基署への開業届出まで一括してサポートを行い、安心して開業日を迎えることができました。
行政書士のポイント解説
用途地域が設定されていない地域では、風俗営業の許可申請において判断が非常に難しいケースが多くあります。単に証明書を取得するだけでは足りず、行政機関への照会や周辺状況の詳細な確認が不可欠です。本件でも、町役場や大阪府の都市整備部とのやり取りを重ねることで、該当物件が許可対象区域であることを明確にし、物件契約のリスクを避けることができました。
また地方自治体では、用途地域のような「行政データ」が都市部ほど整っていない場合も多く、現地調査や補助的な書面取得によって判断材料を集めることが重要です。今回の物件も、居抜きという一見スムーズに営業開始できそうな条件ではありましたが、実際には照度不足や間仕切りによる死角など、細かな法令不適合箇所があり、これらを一つ一つ修正していくプロセスが必要でした。
警察署からの問い合わせに対しても、あらかじめCADで精密に作成した図面類を用いて丁寧に説明することで、信頼感を持って審査に臨んでいただくことができました。立入検査でも構造・設備面での指摘が一切なく、補正ゼロで許可が下りたことは、事前の計画と対応の質を証明する結果となりました。
さらに許可取得後の飲食店営業許可や消防・税務手続きまでを一括して支援することで、ご依頼者様の負担を最小限に抑えつつ、開業までの流れをトータルで支えることができた点も、当事務所ならではの強みです。
解決イメージ
相談者様は、長年地域に根差して接客業をされてきた中で、「地元の人たちが集まって、楽しく過ごせる場所をつくりたい」という想いをずっと温めておられました。しかし、開業には風俗営業の許可が必要であることを知り、大きな壁に感じていたとのことです。
そんな中で当事務所の存在を知り、物件の調査から図面の作成、警察とのやり取り、開業後の各種届出に至るまで、一括して相談できることに安心感を持っていただきました。初めての開業で不安なことも多かったものの、日々のやり取りを通じて信頼を深めながら一つ一つクリアにしていく中で、「自分でも本当にお店が持てるんだ」という実感が湧いてきたと話されていました。
実際に営業をスタートされた後は、地域の方々がふらっと立ち寄れるような温かい雰囲気のスナックとして、リピーターも増えてきたとのことです。「相談して本当に良かった。最初から最後まで安心して進められた」というお言葉をいただき、行政書士としても非常に嬉しいご縁となりました。今後も、こうした地域密着の開業支援に力を入れていきたいと改めて感じさせられる案件でした。