※本記事は、行政書士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景と経緯
ご相談をいただいたのは、阿倍野区在住で長年スナック勤務経験のある60代の女性でした。これまで雇われ店長やママとして働いてこられたご経験を活かし、自分の店舗を持って独立したいという強い想いをお持ちで、地元・阿倍野区内で物件探しをされていました。
駅から近く、夜間の人通りもあるエリアとして阿倍野筋の商業地域にあるテナント2階の物件に目星をつけられており、内装もスナック営業に適した構造になっていたため、「できるだけ早く営業を始めたい」とのことでご相談いただきました。
お電話の段階では「深夜営業の届出でいけるのでは」とお考えだったようですが、面談時に営業内容を詳しくお伺いすると、女性スタッフが隣に座って接客するスタイルで、カラオケやドリンク提供がある典型的な「接待」に該当する業態であることが判明しました。
そのため、風俗営業1号許可が必要であることをご説明し、申請に必要な要件や期間、費用について具体的にご説明しました。初めての行政手続きに不安を抱えておられましたが、「全てお任せします」とおっしゃっていただき、正式にご依頼となりました。
まず初めに行ったのは、阿倍野区の中でも「場所的要件」を満たしているかの確認です。阿倍野区は住宅地域が広く、営業できる用途地域が限られています。物件があるのは「商業地域」でしたが、念のため用途地域証明書を取得し、周辺100メートル以内に保全対象施設（小学校、幼稚園、病院、図書館など）が存在しないことを現地と地図で詳細に確認しました。
次に「構造的要件」の確認です。風俗営業1号の許可を取得するためには、店内の構造が法令に定められた条件をすべて満たしていなければなりません。今回の店舗では、座席の配置や間仕切りの高さ、照明設備、音響設備の位置、客室の視認性などを細かく確認しました。
照度についてはやや暗めの雰囲気のある内装だったため、営業時の最低照度20ルクスを確保できるよう、間接照明に加えて天井にLED照明を追加設置しました。また、カラオケ機器のスピーカーの位置が壁際に偏っていたため、音響の偏りが指摘されるリスクを回避するため、設置位置の再調整を行いました。
その後、営業所平面図、求積図、音響図、照度図、外観図などをCADソフトで作成し、実際の店舗の構造を忠実に再現した図面を作成しました。さらに、住民票、身分証明書、誓約書、用途地域証明書、営業方法概要書、管理者届出書、賃貸借契約書、営業許可に必要な書類一式を揃え、阿倍野警察署に風俗営業1号許可申請を提出しました。
申請後は、約40日で警察による立入検査が実施されました。行政書士が現地に立会い、照度測定・構造チェック・営業方法の説明を行いました。事前準備の段階でしっかり整備していたため、警察官からの指摘事項もなく、非常にスムーズな検査となりました。
その後、約10日ほどで阿倍野警察署から許可証が交付され、無事に風俗営業1号許可を取得できました。お客様はすぐに営業準備に入り、開業初日から常連客を迎えることができ、スムーズなスタートを切ることができました。
行政書士のポイント解説
阿倍野区は、住宅地域と商業地域が入り混じる構成になっており、風俗営業が可能なエリアがかなり限定されています。そのため、まず物件の用途地域や周辺環境を精密に調査し、風俗営業が認められる条件をクリアしていることを確認することが非常に重要です。
また、構造的要件も見逃せません。照度・視認性・間仕切り・通路幅・音響といった細かな規定が多く、警察の現地調査で一つでも不備があると、補正や許可遅延の原因となります。今回のケースでは、事前の設備チェックと図面作成を丁寧に行うことで、警察官の調査でも何も指摘されることなくスムーズに許可取得に至りました。
風俗営業1号許可は、単なる「届け出」とは異なり、警察署による詳細な審査が行われます。だからこそ、自己判断や未確認のまま開業準備を進めるのは非常にリスクが高いといえます。阿倍野区での風俗営業をご検討中の方は、ぜひ早い段階でご相談いただき、許可取得に向けた万全の準備を整えていただければと思います。
解決イメージ
長年スナックで働いてきましたが、自分の店を持つとなると、やはり不安ばかりでした。風俗営業の許可が必要とは知っていたものの、まさかここまで書類が多くて、警察の調査が厳しいとは思っていませんでした。
お願いして本当によかったと思うのは、全部お任せできたことです。図面も難しそうでしたし、照明や音響の細かい条件なんて正直自分では分かりません。行政書士さんが一つひとつ丁寧に説明してくれて、必要なところは業者さんの手配までしてくれたので、とても助かりました。
警察の方が来る日も同行してくれて、本当に心強かったです。無事に許可が下りて、今はお客様もついてきて、毎日お店を開けるのが楽しみです。60代での挑戦ですが、思い切ってやって本当によかったと心から思っています。
