※本記事は、行政書士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景と経緯
ご相談いただいたのは、大阪市内でガールズバーを開業しようとしていた30代男性の方でした。過去に飲食店の経営経験はお持ちでしたが、ナイト系業態に関しては初めての挑戦であり、開業に必要な許可手続きについては全くわからないとのことで、当事務所にご相談くださいました。
はじめは「バー形式の営業だから深夜営業の届出で済むのではないか」と考えておられましたが、詳しく営業内容を確認したところ、女性スタッフがカウンター越しに接客し、お客様と会話を楽しんだり、ドリンクを提供したりするスタイルであることが分かりました。これは風営法上の「接待行為」に該当し、風俗営業1号の許可が必要になる営業形態です。
すでに物件は仮押さえの段階に入っており、契約を進めるかどうかの判断をするためにも、まずはその物件が風俗営業を行える立地条件を満たしているかを調査する必要がありました。大阪市内の中心部では住宅地域と商業地域が入り組んでおり、用途地域や周辺施設との距離関係によっては営業が制限されることがあります。
実際に現地を確認したところ、候補物件は商業地域に位置しており、近隣100メートル以内には学校や保育施設などの保全対象施設も存在しなかったため、風俗営業における「場所的要件」はクリアしていると判断できました。
次に重要となるのが「構造的要件」の確認でした。過去には小規模なバーとして使われていた物件ではあったものの、風俗営業許可を得るためには明るさや見通し、区画構造、出入口の仕様など、細かい基準をすべて満たしていなければなりません。
現地調査を行った結果、照度不足の箇所や、間仕切りの高さが基準を超えている点が確認されたため、内装業者と相談のうえ、補助照明の追加と間仕切りの改修工事を行いました。いずれも比較的軽微な修正で済み、工事費用の負担を抑えることができました。
その後、営業所平面図、客室配置図、照度図、音響設備図、求積図、外観図などをCADで正確に作成し、現地の実際の状況と申請書類が一致するよう注意を払って整備しました。同時に、営業方法概要書、誓約書、用途地域証明書、登記事項証明書、住民票などの関連書類を一式揃え、大阪府公安委員会宛てに申請を行いました。
行政書士のポイント解説
今回のように、ナイト業態が初めての方からのご相談では、特に「どのような許可が必要なのか」という最初の認識のズレがよくあります。深夜営業と風俗営業は制度上明確に分かれており、接待行為があるかどうかで手続きが全く異なります。営業の実態を丁寧にヒアリングすることにより、誤った認識で申請を進めてしまうリスクを未然に防ぐことができました。
また、風俗営業1号許可を取得するための「場所的要件」については、用途地域の種別と、保全対象施設からの距離に大きく左右されます。今回は商業地域であり、近隣にも対象施設が存在しなかったことから、比較的スムーズに立地面の条件をクリアすることができました。
しかし、構造面の対応ではやはり注意が必要です。一般的な飲食店営業と異なり、風営法では店内の細部にまで厳格な基準が設けられています。たとえば、照度が20ルクス以上確保されているかどうか、間仕切りが客室の見通しを遮っていないか、音響設備の配置が適正か、など一つひとつの要素を実地で確認していく必要があります。
さらに、警察署による現地調査では、提出された図面と現況に相違がないかを厳密に確認されます。少しでも違いがあると、その場での指摘や、場合によっては再調査となることもあるため、事前に複数回の現地確認と図面の修正を重ね、万全の体制で調査に臨みました。
行政書士の業務としては、単に申請書を提出するだけではなく、依頼者が開業に向けて一歩一歩前進できるよう、全体スケジュールの管理や他業者との連携も含めたトータルなサポートが求められます。今回は約50日での許可取得となりましたが、事前にしっかりと準備を重ねたことが功を奏したと感じています。
解決イメージ
飲食店の経験はありましたが、ナイト系の店舗となるとルールがまったく違うことを知らず、最初は手探りの状態でした。検索して見つけたこちらの事務所で相談したところ、女性キャストが接客する形式だと風俗営業の許可が必要になると知って、正直かなり驚きました。
自分では届出だけで足りると思っていたので、危うく無許可営業になるところでしたが、制度について分かりやすく説明してもらえたおかげで、必要な手続きが明確になり、すぐに依頼させていただきました。物件の調査から始まり、構造の問題点を洗い出し、照明の追加や間仕切りの修正まで、すべて一つひとつ指示してもらえて本当に助かりました。
図面の作成も、かなり細かいところまで正確に仕上げていただき、警察への申請の際にも安心して任せることができました。現地調査の日も同行してもらえたことで、不安なく対応することができ、スムーズに許可が下りたときは本当にうれしかったです。
現在は無事に営業を開始しており、初めてのナイト業界ではありますが、毎日忙しく充実した日々を過ごしています。最初に適切なサポートを受けていなかったらと思うと、本当にゾッとします。しっかりと許可を取ってスタートできて良かったと、心から思っています。ありがとうございました。
