※本記事は、行政書士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景と経緯
大阪市内に長年居住し、スナックでの接客業に20年以上従事してきた50代の女性が、念願だった独立開業に向けて理想的な物件に出会い、本格的な準備を始められたのがきっかけでした。物件は駅近のテナントビル3階で、内装も整っており、厨房や照明設備も備わっていたため、比較的スムーズに開業できる見込みでした。
当初は深夜酒類提供飲食店として届出を行えば問題ないとお考えでしたが、キャストがカウンター越しに会話や接客を行い、必要に応じて隣席でドリンクを提供する営業スタイルであることから、風俗営業1号の許可が必要であると判断されました。営業形態に基づいた法的判断を丁寧に行ったうえで、必要な手続きを具体的にご説明し、正式に許可申請を進めることとなりました。
最初に確認すべきは、営業所の所在地が法的に風俗営業を認められている場所かどうかという点です。大阪市の中でも天王寺区は住宅・教育・医療施設が密集しており、出店できるエリアが限られています。今回は商業地域に該当し、保全対象施設も半径100メートル以内に確認されなかったため、「場所的要件」はクリアできる見込みが立ちました。
次に着手したのは構造の確認です。既存のバーだった物件は、一見整っているように見えても、風俗営業の「構造的要件」を満たさないケースが少なくありません。実際、店内の照明が一部基準に満たない箇所があり、間仕切りの高さも基準を超えていたため、照明の増設やパーティションの低減工事を行う必要がありました。
構造が整った段階で、図面の作成に移りました。営業所平面図、音響図、照度図、求積図、外観図などをすべてCADで作図し、警察署の厳密な審査基準に対応できるよう、現況との整合性を重視して仕上げました。これらの資料に加え、営業方法概要書、用途地域証明書、賃貸借契約書、住民票、登記事項証明書、身分証明書など、20点を超える書類を揃え、警察署への申請を行いました。
行政書士のポイント解説
天王寺区は、商業地域でありながら保全対象施設が多く、風俗営業の立地要件を満たす物件が限られるエリアです。そのため、契約前に用途地域と保全対象施設の距離を詳細に調べることが何より重要となります。今回のケースでは、相談の初期段階から物件選定と並行してリスクの有無をチェックできたため、無駄な契約や工事の発生を回避することができました。
また、物件が適地であったとしても、既存設備がそのまま基準を満たしているとは限りません。特に照度、間仕切り、見通し、出入口の形状、音響設備の配置などは、警察の実地調査でも厳しく確認されるポイントです。実務では、図面通りの構造になっていないと指摘を受け、再調査になるリスクもあるため、事前にしっかり確認し、必要に応じた補修・工事を行う段取りが重要になります。
今回のように、申請者本人が知らなかった構造基準の修正が複数必要になった場合でも、行政書士が図面と現地の両方を見比べながら対応し、業者とのやり取りまで一貫して支援することで、審査をスムーズに進めることが可能になります。
天王寺警察署は、大阪市内でも比較的審査が厳格な管轄とされており、提出書類と現況の完全な一致、営業内容の明確な記載、申請者の人的要件に至るまで、細かく確認されます。そのため、図面や添付書類の作成段階から慎重な準備が求められます。
今回は、申請から実地調査までが約40日、そこから10日程度で許可証が発行されました。保健所への手続きも並行して進めたため、開業スケジュールに遅延が出ることなく、計画通りの日程で営業開始に至ることができました。
解決イメージ
長年スナックで働いてきた経験があるとはいえ、開業準備はまったくの初体験で、最初はとても不安でした。物件は良い場所に見つかったものの、まさか風俗営業の許可が必要とは思っておらず、話を聞いたときは驚きました。
制度の違いや、なぜ自分の営業スタイルでは風俗営業1号に該当するのかを詳しく説明してもらえたので、納得したうえで手続きをお願いすることができました。照明の明るさや仕切りの高さなど、専門的なことも全部分かりやすく教えてもらえて、業者さんへの依頼もスムーズに進みました。
書類もたくさんありましたが、すべて揃えていただけたので、私は営業の準備に集中できました。警察署への申請や実地調査にも同行していただいて、安心して進めることができました。
いまはお店にも常連さんが増えて、忙しくも充実した毎日を送っています。しっかりと準備して開業して本当によかったと感じています。あのとき専門家に相談していなかったら、今の私はなかったと思います。心から感謝しています。