※本記事は、行政書士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景と経緯
長年スナックでの勤務経験を積んでこられた40代女性のお客様から、自分の店を持ちたいという思いを実現すべくご相談をいただきました。店舗は駅からほど近い商業ビルの2階で、以前は居酒屋として使われていた物件でした。既に仮契約が済んでおり、深夜の営業も想定されていたため、当初は「深夜酒類提供飲食店営業の届出だけで十分」と考えていたとのことでした。
しかし、具体的な接客スタイルを丁寧に確認していく中で、キャストがカウンター越しにお客様と会話し、ドリンクを提供したり、場合によっては隣に座って接客を行う場面が想定されると判明しました。これは風俗営業法上の「接待行為」に該当するものであり、通常の飲食店とは異なり、風俗営業1号許可が必要になります。この点をご説明し、ご理解いただいたうえで、正式に申請準備に取りかかることとなりました。
まず取り組んだのは、店舗の所在地が風俗営業の許可を取得できるエリアであるかどうかの確認でした。地域によっては風俗営業が禁止されている「用途地域」に指定されている場合もあり、また、近隣に小学校や保育所などの保全対象施設があると許可を取得することができません。
今回の物件は商業地域に属しており、さらに半径100メートル以内に保全対象施設が存在しないことも確認できたため、「場所的要件」はすべてクリアしていました。次に行ったのは「構造要件」の確認です。風俗営業1号許可では、店内の構造に関する細かい基準が数多く定められています。たとえば照度の基準、客席の見通し、間仕切りの高さ、音響設備の配置など、細部にわたる審査が行われます。
現地を調査したところ、一部照明の明るさが基準に達していなかったことや、カウンター裏の間仕切りが高く視界を遮っていたことが判明しました。これらの点について、内装業者と綿密に打ち合わせを行い、必要な箇所の改修工事を行いました。
行政書士のポイント解説
風俗営業1号許可の取得においては、「場所的要件」と「構造要件」の2つを丁寧に確認することが極めて重要です。許可対象地域かどうかを見誤ったまま物件契約を進めてしまうと、後戻りできない損失につながるため、契約前に相談していただくことが何よりも重要です。今回のように、事前相談の段階で法的な制限をしっかり確認できたことで、無駄な支出やトラブルを未然に防ぐことができました。
また、構造要件に関しては、図面上では問題がないように見えても、現場での実際の構造が異なっていると許可が下りない場合があります。たとえば、間仕切りの高さや照明の照度は、メジャーと照度計を使って正確に測定する必要があり、その場の印象だけで判断するのは危険です。私たちは、現地確認を複数回行いながら、照度や見通しなどの基準を一つひとつ丁寧に満たしていく作業を重視しています。
さらに、風俗営業1号許可では図面の作成も大きなポイントです。営業所平面図、照度図、音響図、営業所求積図、外観図、客室配置図などをすべてCADで作成し、現地の状況と図面に齟齬がないように整える必要があります。図面のわずかな相違でも調査時に指摘を受けて再提出となることがあるため、設計段階から緻密な調整を行う必要があります。
申請書類も多岐にわたり、営業方法概要書をはじめ、身分証明書や用途地域証明書、賃貸借契約書など20点近い書類を一括で揃えることになります。特に営業方法概要書では、接待の内容や営業時間、従業員体制などを具体的に記載する必要があり、警察の審査担当官によっては非常に厳密な確認がなされます。
今回のケースでは、事前協議の段階から警察署の担当官と丁寧にやりとりを行い、構造や営業方法に関する懸念点にあらかじめ対応しておいたことで、実地調査当日も特に問題なく進行し、無事に許可証を受け取ることができました。
解決イメージ
長年の夢だった「自分のスナックを開業する」という想いを形にできたことに、言葉では言い尽くせないほどの達成感を感じています。最初に許可が必要だと聞いた時は驚きと不安でいっぱいでしたが、相談してからはずっと寄り添っていただき、本当に心強かったです。
照明の明るさや仕切りの高さなんて、言われなければ気づかないようなポイントでしたが、プロの目で見てもらえて、具体的な修正点をすぐに内装業者に伝えて対応できました。図面の作成や警察署への提出書類もすべて用意してもらえて、自分はオープン準備に専念することができました。
実地調査の日にも一緒に来てもらえて、不安なことはすぐその場で対応してくれたので、安心してやりとりができました。営業開始から数週間ですが、常連のお客様も少しずつ増えてきて、毎日楽しく過ごしています。あの時、きちんと専門家に相談していなかったら、開業できていなかったかもしれません。本当に感謝しています。