※本記事は、行政書士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景と経緯
今回のご相談者様は、大阪市内にお住まいの女性で、これまでスナックで長年ママとして勤務してきた方でした。長年の経験を活かし、いよいよ自分の店を持ちたいという強い希望を持っておられ、ご自身でテナントを見つけて開業準備を進めておられるタイミングでご連絡をいただきました。
当初は「深夜酒類提供飲食店営業開始届出だけで開業できると思っていた」とのことでしたが、営業スタイルについて詳しくお伺いすると、カウンター越しでの会話やお酒の提供、場合によっては隣に座っての接客を行う予定であることが分かりました。これらは風俗営業法上の「接待」に該当する可能性が高く、深夜営業届出ではなく「風俗営業1号許可」が必要になると判断いたしました。
物件の内装工事に着手する直前だったこともあり、営業形態に適した構造要件についても詳細にご説明し、まずは許可申請のための準備を優先することをご提案しました。対象物件は大阪市内の駅近に位置する雑居ビルの3階部分で、以前は飲食店として使用されていた形跡がありましたが、風俗営業許可の取得実績はなく、まずは用途地域や保全対象施設との距離を正確に調査する必要がありました。
現地での実測調査を行った結果、物件は営業可能な商業地域に位置しており、保育園や幼稚園などの保全対象施設との距離も問題ないことが確認できました。そこで、風俗営業許可の取得に向けて本格的に手続きを進めていくこととなりました。
行政書士のポイント解説
今回のように、自分の店舗を開業する段階で「深夜営業の届出だけで良い」と考えておられる方は少なくありません。しかし、実際には接待行為を含む営業スタイルの場合、風俗営業の許可が必要となるケースが多く、判断を誤ると無許可営業となってしまうリスクがあります。そこでまずは、どのような接客を行う予定か、具体的な営業内容を丁寧にヒアリングすることが重要です。
物件については、風俗営業の許可を取得できる地域かどうかの確認が最優先となります。今回は周辺に保全対象施設が点在しており、図面上では判断できなかったため、現地での実測を行いました。結果として、距離の基準をクリアしていたため、営業可能であることが確定しました。
さらに、内装工事の段階から警察基準を意識した設計が求められました。特に3階部分ということで、避難経路の確保や非常口の位置、誘導灯の設置、照明の明るさ、間仕切りの構造など、風営法における構造要件を満たすよう業者と密に連携しました。あらかじめ行政書士が現地を確認し、CAD図面の作成を指示することで、後々の修正リスクを最小限に抑えました。
申請書類は20種以上に及び、営業所平面図・照度図・音響図・営業方法概要・用途地域証明書・賃貸借契約書・法人登記事項証明書などを一式整備しました。提出後は福島警察署とやり取りを行い、審査開始から約40日後に実地調査が実施されました。現地調査では設備や構造の確認が行われ、特に大きな指摘もなくスムーズに終了し、その約2週間後に許可証が交付されました。
その後、保健所への営業許可申請も並行して行い、予定通りのスケジュールで開業することができました。風俗営業1号許可は申請の難易度が高く、構造的な要件も厳しいため、経験のある専門家の関与が不可欠です。
解決イメージ
これまで知り合いの店で長年働いてきましたが、自分の店を開くのは初めてで、正直何から始めていいのか分からず不安でした。最初は深夜営業の届出だけで大丈夫だと思っていたのですが、接待という言葉の意味や、風俗営業の許可が必要な理由を丁寧に説明してもらって、自分の考えが甘かったことに気づきました。
物件も、開業に向けて決めかけていた段階だったので、用途地域や周辺施設の距離など、こんなに細かく調べないといけないと知って驚きました。でも、その調査も全部やっていただけて本当に助かりました。図面や書類も自分では絶対にできなかったと思います。
警察の審査のときも同行してくださって、緊張しながらも心強かったです。無事に許可が出てからは、保健所の手続きまでサポートしていただき、何のトラブルもなく開業することができました。今は常連さんも増えて、楽しく営業できています。自分のペースで働ける毎日がとてもありがたくて、本当にお願いして良かったと思っています。
