※本記事は、行政書士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景と経緯
地方のシェアオフィスを活用してスタートアップ事業を展開していた小規模IT企業では、新たに自社開発中のWebサービスにおいてクラウドインフラの運用とフロント・バックエンド両面の開発を担うエンジニアを必要としていました。すでに案件受注も順調に進み始め、開発体制の中核を担う即戦力人材の確保が急務となっていました。
このような中で注目されたのが、中国の有名大学で情報工学を専攻し、日本企業でのインターン経験がある20代の女性候補でした。日本語能力にも優れており、日本語能力試験N2を取得済み。実際に日本企業の就労環境にも馴染みがあり、コミュニケーション面でも全く問題がないと判断されました。
ただし、雇用予定の企業は従業員数3名の小規模法人であり、オフィスもシェアスペースを活用しているなど、入管審査において形式的な要件で不安視されかねない点も存在していました。そのため、「地方の小規模企業でも技術・人文知識・国際業務ビザを問題なく取得できるのか」「業務内容と学歴の整合性をどう立証すればよいのか」「どのような書類を整備すべきか」など、申請に向けた不安をすべて払拭したいとのご要望がありました。
ご本人と企業の双方と打ち合わせを重ねたうえで、制度要件の整理、雇用契約の設計、書類の整備、補足説明の組み立てまで包括的に支援させていただくこととなりました。
行政書士のポイント解説
技術・人文知識・国際業務ビザの審査において最も重視されるのは、本人の学歴や職歴と、実際の業務内容との合理的な整合性です。本件では、候補者が情報工学を専攻しており、卒業研究や課外活動を含めてシステム設計やプログラミングに関する知識・経験が豊富であることが確認できました。そこで、業務内容として予定されていたWebアプリケーション開発、クラウド環境でのインフラ管理、API設計などの具体的業務との一致を明示する必要がありました。
これに対しては、履歴書や職務経歴書に加え、実務内容を詳細に記載した業務内容説明書を作成し、どの作業がどの専攻内容と対応しているのかを論理的に整理しました。また、本人が日本語能力試験N2を所持していることを示す証明書、日本企業でのインターン活動報告書なども提出し、日本語による業務遂行能力を立証しました。
雇用主側では、まず労働条件の明示が求められます。雇用契約書には、月給28万円以上、週40時間勤務、年間休日120日、社会保険と労働保険への加入など、日本人と同等以上の条件を明記しました。賃金台帳や給与支払明細書、就業規則、労働保険加入証明書などの添付資料を揃え、形式面での不備が一切ないよう対応しました。
また、小規模企業であることを補うため、教育体制についても明確化しました。新任社員向けのOJTスケジュール、日報フォーマット、社内コードレビュー体制、月次の業務評価・フィードバック制度の存在を説明資料として添付しました。研修・教育の実施により、外国籍の技術者であっても企業文化に即した業務遂行が可能であることを示しました。
さらに、審査官の懸念となり得る「企業の経営安定性」に関する資料として、会社概要、法人登記簿、代表者の経歴、シェアオフィス契約書、過去の案件受注履歴、売上推移、今後の案件見通しなどを取りまとめました。顧客企業名や業務範囲、対応内容、請求実績を詳細に記したことで、「収益性のあるIT事業を実際に運営している会社である」ことをデータで証明しました。
これら一式の資料を添えて、在留資格認定証明書交付申請を行った結果、申請から約6週間という比較的早期の段階で許可が下り、補足資料の追加提出もほとんど求められることなくスムーズに認定を得ることができました。
解決イメージ
海外大学で情報工学を学んできた私は、将来的に日本の技術職として長く働きたいという希望を持っていました。日本でのインターン経験を通じて、日本の職場環境や開発スタイルにも慣れていたため、ぜひ正式に採用されて働きたいと考えていました。
ただ、ビザの制度については自分ではまったく分からず、必要な書類や制度のルールも全くイメージがつきませんでした。幸いにも企業側が行政書士の先生に依頼してくださったおかげで、私自身の経歴や業務内容が制度にきちんと適合しているかどうかを一つ一つ丁寧に確認してもらうことができました。
履歴書の書き方や業務説明の方法、推薦文の準備など、最初は戸惑うことも多かったですが、全部一緒に整理してくださったことで、自分でも内容をしっかり理解でき、安心して申請に臨めました。申請後は、あまり待つこともなくスムーズに許可が下りたと聞いて、とても嬉しく思いました。
企業の方からも、私が入社してからクラウド環境の整備や運用効率が改善され、他のスタッフの業務負担が軽減されたと言っていただきました。小規模な会社でも、しっかりと制度に対応すれば外国人が正社員として働けると聞いて、私自身も責任をもって頑張らなければと感じています。
現在は地方のシェアオフィスで、日本人スタッフと連携しながらWeb開発やインフラ運用の仕事に携わっています。自分の専門性を活かせる環境で働けること、そして日本での生活を安定して続けられることに感謝しながら、これからも会社と共に成長していきたいと思っています。