※本記事は、行政書士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景と経緯
ご相談をいただいたのは、地方に拠点を置く従業員10名ほどの建設会社でした。長年にわたり住宅や小規模施設の設計施工を手がけ、地域密着型の企業として信頼を築いてこられた企業様でしたが、近年は設計業務の依頼が増え、人材不足が深刻になっていました。特にCAD操作や建築設計に強い即戦力が求められていました。
そんな折、知人の紹介で、インドから留学経験を経て来日した若い外国人の候補者に出会い、本人の建築学科卒業歴や実務経験、日本語能力などが自社のニーズに非常に合致していることが分かりました。候補者も日本の建設業界でキャリアを積みたいという強い希望を持っていたため、企業としては正社員としての採用を検討することとなりました。
しかし、企業として外国人を正社員として迎えるのは初めての経験であり、どのような在留資格で申請すべきか、どのような書類を揃える必要があるのかという不安から、専門家のサポートを求めて当事務所へご相談いただいたという経緯です。
行政書士のポイント解説
今回のケースでは、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格による採用を前提に、企業・本人それぞれの要件を丁寧に整理し、許可取得に向けた戦略的な書類構成を整える必要がありました。
まず本人側の要件整備としては、建築学科の学位取得を証明する大学卒業証明書および成績証明書を取り寄せました。これに加えて、日本語能力試験N2合格証を提出し、日常業務レベルでの日本語対応が可能であることを客観的に示しました。また、母国や日本国内での建築関連業務の経験については、職務経歴書と実績概要書を整理し、過去のインターンシップやアシスタント業務で使用していたCADソフトの種類や実績内容などを明示しました。
職務内容説明書の作成では、単に「設計業務」とするのではなく、具体的にどのような業務を行うのかを細かく記述しました。たとえば、施主との打ち合わせ参加、仕様書作成、プレゼン資料作成、建築基準法との整合確認、現場との調整作業、コスト見積もりの作成など、専門性の高い内容を列挙し、本人の学歴との関連性を明確に示す工夫を行いました。
企業側については、まず雇用契約書を作成し、月給ベースで約30万円という報酬内容、週休二日制、残業代支給、交通費全額支給、社会保険完備という待遇を明記しました。給与台帳や就業規則、源泉徴収票などを提出資料として整え、日本人と同等以上の条件であることを客観的に証明しました。さらに、外国人新入社員向けのOJTプログラムや、業務マニュアル、日本語学習支援体制なども資料として整備しました。
また、会社側の事業実態と安定性を示すために、過去3年分の施工実績一覧表、施工写真、顧客リスト、地域新聞などの掲載実績、売上推移、従業員構成などをまとめた会社案内資料を作成しました。地方企業であることから「地元密着で安定的に受注を獲得しており、経営基盤は安定している」という点を入管審査官に伝えるため、補足説明書も添付しました。
最終的には、これらすべての資料を「在留資格認定証明書交付申請」としてまとめて提出。申請から約6週間後、追加資料の請求もなく無事に許可が下りました。
解決イメージ
申請許可後、対象者は正式に建設会社の設計部門に配属され、すぐに即戦力として活躍を始めています。CADを用いた設計提案の質が向上しただけでなく、海外の設計事例や新たな視点をチームにもたらし、社内全体に良い刺激を与える存在となっています。日本語でのコミュニケーションもスムーズで、現場スタッフや施主とのやり取りも円滑に進んでいるとのことでした。
企業側からは、「外国人採用は初めてで不安もあったが、ここまでスムーズに進んだのは行政書士の丁寧な支援があったから」と高評価をいただいております。また、本人自身も「自分のスキルを日本で活かせる場を得られて感謝している」と前向きに日々の業務に取り組まれており、将来的には二級建築士資格の取得にも挑戦したいと意欲を見せています。
この事例は、地方の小規模建設業者であっても、制度と書類の整備次第で外国人専門職の採用が十分可能であることを示す好例となりました。受け入れ体制と実態の丁寧な整理があれば、たとえ初めての外国人雇用であっても、技術・人文知識・国際業務ビザの取得は現実的であるということを改めて感じさせる内容となりました。