※本記事は、行政書士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景と経緯
今回のご相談者様は、来日後に語学学校と専門学校で学び、日本企業に就職して就労ビザでの勤務経験を積んできた外国人の方でした。在日生活を通じて日本のカフェ文化や雑貨市場への関心を高めていき、いつか自分の店舗を持ちたいという思いを強くされていました。資金面の都合もあり、都市部での出店は難しいと感じていた中、住宅地にある古民家風の空き家を見つけ、これをリノベーションして開業する構想を具体化されていました。
現地調査の結果、対象物件は木造の空き家で改修可能な状態にありましたが、初めての起業であることから、事業計画の策定、法人設立、資本金の確保、必要書類の準備などに不安を感じておられました。加えて、経営管理ビザの制度そのものについての知識も乏しく、独力で進めることは難しいと判断され、当事務所に総合的な支援をご依頼いただきました。
行政書士のポイント解説
経営管理ビザの取得においては、事業所の実在性、500万円以上の資本金の払い込み、明確な事業計画と収支予測が特に重要です。今回は、空き家を対象とした賃貸借契約を締結したうえで、現地の写真、設計図、周辺の環境写真などを整理し、事業所としての使用可能性を丁寧に説明しました。
法人設立については、飲食提供と雑貨販売の双方を含む定款を作成し、500万円の資本金を払い込んだうえで、株式会社として登記を完了させました。登記簿謄本には本人が代表取締役であることが明記されており、その写しも申請書類に添付しました。
事業計画書は、地域性を踏まえたモデルとしました。地元の住民や周辺の訪問客をターゲットに、ベトナム雑貨や軽食・飲料を提供する店舗とする構想を展開しました。仕入れルートとしてはベトナム現地業者とのやりとり記録やサンプル写真、見積書などを用意し、実際に事業準備が進行中であることを明確にしました。
収支計画では、初年度からの黒字見通しを根拠付きで提示し、月ごとの予測売上、原価、販管費、利益率の推移を表にまとめました。販促方法としてSNS活用、地域イベント参加、フライヤー配布などを織り込むことで、持続的な集客が可能であることを強調しました。
また、資金調達の裏付けとして、本人名義の預金通帳の履歴、親族からの贈与契約書、公証済みの資金提供証明書を添付しました。経営能力と日本語能力の証明としては、日本語能力試験N2の合格証、語学学校の成績証明書、日本企業での勤務評価資料などを提出しました。
これらの書類を一つひとつ整理し、要点を補足説明書にまとめて提出した結果、申請からおよそ2か月で経営管理ビザが許可されました。追加書類の照会もなく、スムーズに認定を受けることができました。
解決イメージ
今回の事例では、都市部ではないエリアであっても、物件の現実性と具体的な開業準備が進んでいれば、経営管理ビザの取得が十分に可能であることが明らかになりました。特に、空き家の有効活用と外国人による地域貢献という観点が評価された点も大きな要素といえます。
ご相談者様は、その後無事に店舗改装を完了し、カフェと雑貨販売を兼ねた小さなお店をオープンされました。地域住民を中心に徐々に常連客がつき始め、異国の文化を気軽に体験できる場として歓迎されています。SNSでも話題に上り、今では地元メディアにも取り上げられるなど、地域活性化の一翼を担う存在となりつつあります。
今後も同様のご相談に対応するにあたり、今回のように丁寧に現地の特性や起業者の想いを汲み取った支援が重要であると改めて感じた案件でした。初めての起業で不安が大きい方でも、明確な準備と的確な証明資料の提出があれば、制度の枠組みの中でしっかりと許可を得ることができます。