※本記事は、行政書士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景と経緯
大阪府内の郊外にある金属加工業の町工場から、外国人技術者の雇用に関するご相談をいただきました。クライアント様の会社は30年以上の歴史があり、地元では高い評価を受けているものの、ここ数年でベテラン職人の高齢化が進行しており、特に設計部門における若手技術者の不足が深刻な課題となっていました。
何度もハローワークや求人広告を活用して採用活動を行ったものの、設計業務に対応できる人材は見つからず、古参の職人が図面から現物を起こす作業を手作業で続けるしかない状況でした。そこで東京の人材紹介会社を通じて、日本の大学を卒業し母国企業でCAD設計の実務経験を持つインドネシア国籍の男性をご紹介いただき、リモート面接を経て採用を決定されました。
しかし、クライアント様にとって外国人雇用は初めてであり、在留資格の申請や必要書類の準備、実際の雇用後の体制づくりについて強い不安がありました。そのため、技術・人文知識・国際業務ビザの申請サポートを当事務所にご依頼いただきました。
行政書士のポイント解説
技術・人文知識・国際業務ビザの申請では、外国人本人の学歴・職歴が職務内容と合致していることが前提条件となります。今回はご本人が日本の四年制大学で機械工学を学び、卒業後はインドネシアでCAD設計に従事していたという明確な経歴があったため、職務内容との整合性は問題ありませんでした。
まずはご本人の卒業証明書、職務経歴書、日本語能力試験N2の合格証明書などを整備し、業務遂行能力を立証しました。また、企業側には雇用契約書、会社概要、業務内容の詳細資料、給与水準や源泉徴収票などを準備いただき、雇用主としての受入れ体制と安定性を文書で示しました。
設計業務の具体的な内容を伝えるため、職務記述書を作成し、CADソフトの使用状況、社内の業務フロー、上司や指導担当者の配置なども明記しました。加えて、日本語でのOJTや生活面の支援体制についても補足説明書に記載し、外国人材が長期的に働ける環境であることを入管へ丁寧に説明しました。
これらの準備を経て、申請から約1か月で無事に技術・人文知識・国際業務ビザが許可され、インドネシアから来日した採用者がすぐに就労を開始することができました。
解決イメージ
最初は、外国人を採用することに対して非常に大きな不安があったとクライアント様はおっしゃっていました。特に、工場の規模が小さく、ベテラン社員ばかりという環境の中で、文化や言語の異なる人材を受け入れることに抵抗があったそうです。しかし、技術者不足の状況を打開するため、思い切って一歩踏み出す決断をされました。
結果として、外国人エンジニアの加入によって設計部門のIT化が一気に進み、従来は手作業だった図面作成がすべてCAD化されました。ベテラン職人たちとの分業体制も自然にできあがり、業務の効率が飛躍的に向上しています。現場の雰囲気も若返り、新しい発想や柔軟なコミュニケーションが日常に根付きつつあるとのことでした。
現在では、クライアント様のもとでその技術者が中心となり、新たな受注にも対応できる体制が整いつつあります。「最初は不安しかなかったが、今では本当に採用して良かった」と語っていただき、今後も必要に応じて外国人材の活用を検討したいとのお声をいただいています。