※本記事は、行政書士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景と経緯
今回ご依頼いただいたのは、郊外でWebアプリケーション開発や業務システムの受託開発を手がける、従業員15名規模のIT企業様でした。関西圏の中小企業を中心に、地域密着型のシステム導入支援を行ってこられた実績があり、業界内でも一定の評価を得ている企業です。しかし近年、特にリモート案件の増加や取引先の多様化に伴い、社内エンジニアの人員が限界に達し、人手不足が深刻化していました。
そんな中、代表者様が過去に参加したインドのIT展示会で現地エンジニアと交流を持ったことがきっかけとなり、SNSを通じて今回の候補者と連絡がつきました。候補者から「日本で働きたい」との希望が示され、代表者様としても優秀なエンジニアを確保したいという思いが強く、採用を前提としたビザ取得を視野に入れた相談を当事務所へ持ち込まれました。
クライアント様は、地方企業であるがゆえに「果たしてこの規模の会社で本当にビザが取れるのか」「外国人に任せる業務範囲の説明方法はどうすればよいのか」といった漠然とした不安を抱えており、制度全体の理解と、現実的な取得可能性について丁寧なサポートを必要とされていました。
行政書士のポイント解説
技術・人文知識・国際業務ビザの取得においては、外国人本人の学歴・職歴と、受け入れ先企業での職務内容との整合性が極めて重要な審査ポイントとなります。今回の候補者はインドの大学でコンピュータサイエンスを専攻し、卒業後も一貫してJavaを中心としたシステム開発に携わってきた実績があり、日本で予定されている業務との関連性が明確でした。
まずは業務内容の適切な定義が必要であるため、企業様と協議を重ね、候補者が担当する予定のプロジェクトの内容や使用言語(Java、Spring、Vue.jsなど)、求められる技術要素、業務の中で果たすべき役割などを詳細に記載した職務内容説明書を作成しました。単なる開発補助ではなく、高度な専門性を伴う業務であることを明示するための工夫を随所に取り入れました。
また、中小企業である以上、雇用の安定性についても示す必要があります。雇用契約書や就業規則、給与規定、勤務時間の管理体制、月給制での採用実態などを整備し、社会保険への加入状況を含めて雇用環境の適正性を証明しました。特に、候補者に対する教育やOJTの体制、社内の外国籍社員への配慮状況、社内での日本語サポート体制なども重要な審査要素となるため、社内の制度として明文化することで書面の説得力を高めました。
日本語能力については、候補者が日本語能力試験N2を保有しており、業務上の意思疎通に支障がないレベルであることを、履歴書やスピーキングテストの結果と合わせて説明しました。さらに、住居の手配、空港送迎、生活立ち上げ期の支援計画など、企業としてどのように生活面のフォローを行うかについても、申請書類の中で明確に提示しました。
最終的には、在インド日本大使館を通じた在留資格認定証明書交付申請を行い、すべての書類と資料を提出したうえで、約7週間後に無事交付決定となりました。これにより、正式な就労ビザを取得しての来日が可能となり、企業様にとっては初の外国籍エンジニアの受け入れが現実のものとなりました。
解決イメージ
当初は、地方にあるうちのような会社が本当に外国人を採用できるのか、正直半信半疑でした。インドの展示会で知り合った彼とやり取りをしているうちに、「この人と働きたい」という気持ちは強まっていたのですが、制度も手続きも複雑で、自分たちだけでやるのは難しいと感じていました。
実際に行政書士さんに相談してみると、最初のヒアリングから丁寧に制度の説明をしてくださり、どのような資料が必要か、どういう順序で進めるべきかが明確になりました。特に、職務内容の書き方や社内制度の整備については、これまで意識が回っていなかった部分が多く、とても勉強になりました。
彼の受け入れが決まったことで、社内も活性化し、日本人社員の意識にも良い変化が見えています。今ではすでに2つのプロジェクトに参加してくれており、技術的にも人間的にも信頼できる戦力となっています。今後、他の国からの人材にもチャレンジしていきたいと思えるようになりましたし、その際にはまた迷わずお願いするつもりです。心から感謝しています。