※本記事は、行政書士が実際に行う支援内容をもとに構成した【モデルケース事例】です。
類似の課題を抱える方にとっての参考となるよう、実務に即した構成としていますが、地域名・状況設定は一部仮定を含むことを、あらかじめご理解ください。
想定される背景と経緯
今回ご依頼をいただいたクライアント様は、数年前に地域おこし協力隊としてある農村地域に移住された女性の方でした。協力隊としての活動終了後もその地に定住され、地域との関係を深めながら、自らの生活基盤を築かれていました。移住後に築き上げた地域との信頼関係の中で、地元の方々から「あなたがやるなら行ってみたい」「カフェを開いてほしい」という声が多く寄せられるようになり、自宅近くで手に入れた古民家を活用して、週末限定の小さな食事処を開業しようと決意されました。
ただし、その古民家は築年数が非常に長く、もともとは住宅用に使われていたため、飲食店営業許可を取得するためにどのような改修が必要なのかが分からず、また保健所への相談も一から始めなければならない状況でした。インターネットなどで調べても情報が断片的で、自分のケースに当てはまる内容が見つからず、不安を感じたクライアント様は、営業許可の申請と店舗改修計画の相談を同時にできる専門家として、当事務所にご連絡をいただきました。
現地確認を行った際、建物の骨組みはしっかりしていたものの、内装は木材中心で衛生面への対応が必要であり、厨房設備も一切備わっていませんでした。加えて、厨房と客席を明確に分けるための動線設計も求められる構造であり、飲食店営業に必要な基本要件をクリアするには、単に申請書を提出するだけでなく、施工計画や設備導入も含めた全体設計が不可欠でした。さらに、営業日が週末のみである点についても、保健所に対して継続的な衛生管理体制が取られることを説明する必要があるため、営業形態の提示にも工夫が求められる状況でした。
行政書士のポイント解説
本件は「古民家を活用した地域密着型の飲食店」という非常に意義のある取り組みであると同時に、法的・実務的には課題の多い案件でした。特に重要だったのは、衛生基準を満たす設備と構造をどのように整えるか、そしてそれをどのように図面や説明資料に落とし込むかという点です。
まず、厨房に関しては木製の床材が使われていたため、保健所の求める清掃性や耐水性を確保する必要がありました。そこで、床には防水性のあるクッションフロアを敷き、壁面には塩化ビニール製のパネルを貼るよう指導し、必要な衛生管理が可能な仕様を提案しました。厨房内の設備としては、三槽シンク、業務用冷蔵庫、IHコンロ、調理台、手洗い器、排水設備などを新設し、家庭用の簡易なキッチンとは明確に区別される構造を整備しました。
次に、営業許可のために不可欠な図面作成では、厨房・客席・手洗い・動線・出入り口の配置をすべて明示した平面図を作成し、さらに寸法を明記して保健所の事前相談に備えました。当事務所では、実際に現地の寸法を測定し、それをもとに申請書類と一体化された図面を作成するため、行政側との意思疎通もスムーズに進めることができました。
また、営業日数が週末のみに限られるという点については、あらかじめ営業形態届出と併せて、「常設型であるが営業日が限定的であること」「営業日以外も衛生管理が維持される体制があること」を説明した文書を作成しました。さらに、厨房の清掃スケジュールや食材の保管方法、消毒薬の使用計画、虫害対策などをまとめた簡易マニュアルを用意し、クライアント様が日常的に衛生管理を行っていることを具体的に示しました。
保健所との協議を経て、図面・構造・設備・管理体制に問題がないことが確認され、申請から約3週間という短期間で飲食店営業許可を取得することができました。地域の方々との信頼関係とクライアント様の想いを大切にしつつ、法的な要件を丁寧に満たしていくことで、地域に根ざしたカフェの実現をお手伝いできた非常に意義深い案件となりました。
解決イメージ
もともと古民家を使ったカフェを開きたいという思いはずっとありましたが、現実は分からないことばかりで、営業許可が本当に取れるのかどうか、ずっと不安でした。住居として使われていた建物だったので、何をどこまで直せばいいのか、保健所の基準にどう対応すればいいのか、最初はまったく見当がつきませんでした。
自分なりにネットで調べても、難しい言葉ばかりで、具体的に自分のケースでどうすればいいのかが全然分かりませんでした。そんなときに、知人から「行政書士さんに相談してみたら？」と勧められたのがきっかけで、思い切ってご連絡させてもらいました。
行政書士の先生は、すぐに現地を見に来てくれて、厨房に必要な設備や、どの壁や床を直せばいいのか、優先順位まで細かくアドバイスしてくれました。どれも無理な工事ではなく、自分の予算に合わせた方法を一緒に考えてくれて、本当に心強かったです。最終的には、図面の作成や保健所とのやり取りまで全部やってもらえたので、初めての手続きでも安心して進めることができました。
オープンしてからは、地域の人がふらっと立ち寄ってくれて、「なんか落ち着く空間やね」と言ってもらえるのがとても嬉しくて、この場所を残してよかったと心から思っています。サポートしていただいたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
