※本事例は個人情報の観点からモデルケースとして地域や一部内容を変更して記載しています。
ご依頼の経緯
ご相談をいただいたのは、挟山市内に自宅兼工房を構えたいという希望をお持ちの40代男性でした。府内の老舗家具工房で20年以上勤務されており、手作業による丁寧な仕上げとデザインセンスに定評のある職人さんでした。コロナ禍をきっかけに、ライフスタイルの変化や自宅改装への関心が高まったことを感じ、以前から構想していた「自分の工房を持つ」という夢を実現させるため、創業準備を本格化されたタイミングでご相談に来られました。
開業資金としては、自己資金のほかに日本政策金融公庫からの融資を希望されており、設備購入資金と広告宣伝費、最低限の運転資金を含めた約400万円程度の融資申請を想定されていました。しかし、書類の作成方法や事業計画の作り方に不安があり、また個人事業主としての信用や創業直後の実績が少ない点も懸念されており、万全の準備を整える必要がありました。
担当行政書士のコメント
挟山市という地域特性を活かした事業として、オーダーメイド家具の開業は非常に魅力的な内容でした。住宅のリフォームや新築、カフェ開業などが多い地域でもあり、家具需要の波を捉えて柔軟に対応できる体制を示すことがポイントでした。
まず、これまでの職歴や技術的な強みをしっかりと整理し、どのようなジャンルの家具に対応可能か、どのような素材を得意としているかを明記しました。実績を証明するため、過去に手掛けた家具の写真や施工事例をポートフォリオにまとめ、金融機関への面談時に提示する資料として用意しました。
事業計画書では、対象顧客を挟山市内および周辺地域に住む30〜50代の持ち家層に設定し、「自分だけの家具」を求めるニーズに対応できることを訴求しました。ターゲット層のライフスタイルや予算感をもとに、価格帯と制作ペースをシミュレーションし、月間3〜5件程度の受注であれば無理なく対応できる体制であることを数字で示しました。
また、創業初期の販促活動として、ホームページ制作、Googleマップへの掲載、Instagramでの制作工程発信、地域の住宅会社や設計士との連携などを盛り込みました。特に挟山市という地名や地域性を活かすSEOキーワードをホームページに組み込む予定であることを説明し、地域内での集客導線を設計しました。
資金計画については、主に木工機械(昇降盤、手押し鉋、自動鉋、バンドソーなど)や作業台、電動工具類の購入に加え、工房内の照明・電源工事、材料購入費を想定。あわせて、広告費や開業直後の生活費も含めた形で見積もりを提出しました。
面談対策としては、「競合との差別化」「単価設定の根拠」「リスクへの備え」といった点に重点を置き、ご本人の職人としての信念と経営者としての視点の両立が評価されるよう準備を進めました。結果として、融資申請額400万円のうち、350万円が無担保・無保証人で実行され、自己資金との合計で万全の体制での開業に至りました。
お客様の声
20年以上、職人として家具を作ってきましたが、自分の看板を掲げるのはこれが初めてでした。技術だけでは通用しないということは分かっていたものの、数字や書類になると全く分からず、やはり専門の方に相談して良かったと感じています。
自分のやりたいことを言葉にしてもらったり、思っていたよりも事業としての形が整ってきたりする過程は、とても励みになりました。細かい資金の使い方やSNSの活用方法まで一緒に考えてもらえたおかげで、不安よりも「やってみよう」という前向きな気持ちになれました。
実際に工房を構えてからは、近所の方がふらっと見に来てくれたり、「こんな家具作れますか?」と声をかけてくれたりして、地域の中で少しずつ居場所ができてきました。挟山市で長く愛される工房になるよう、これからも一つひとつ丁寧にやっていこうと思います。