※本事例は個人情報の観点からモデルケースとして地域や一部内容を変更して記載しています。
ご依頼の経緯
ご相談をいただいたのは、富田林市内にお住まいの40代女性でした。美容師として約15年間、堺市や河内長野市など複数の美容室で勤務されてきた経験があり、丁寧な接客と確かな技術力で多くのお客様から信頼を集めてこられました。
しかし、家族の介護をきっかけに勤務を続けることが難しくなり、在宅でもできる形で自分の経験を活かせないかと模索していたところ、「訪問理美容サービス」という形にたどり着いたそうです。富田林市内でも高齢者向けの訪問美容に対応できる事業者は限られており、需要があることを確認したうえで、正式に開業の準備を進める決意をされました。
ただし、訪問理美容には車両や専用の移動式シャンプー台、消毒機材、ポータブル鏡、作業椅子などの専用設備が必要となり、初期費用がまとまって発生することが予想されました。自己資金だけではすべてを賄うことが難しく、日本政策金融公庫の創業融資を検討された結果、申請書類の作成支援を依頼されました。
担当行政書士のコメント
今回のケースでは、これまでの職歴や資格、実績をどう活かして、地域に新しいサービスを提供するかが事業計画の要となりました。訪問理美容サービスという事業モデルは、高齢化が進む地域では大きなニーズがある一方で、収益の安定化や継続性の説明が必要となるため、金融機関に対して分かりやすく丁寧に伝える工夫が求められました。
まず、訪問サービスの対象となる顧客層を、在宅介護を受けている高齢者、要介護認定を受けている方、障がいを持つ方、高齢者施設入居者などに分類し、それぞれに合わせた対応内容を整理しました。予約の取り方や移動ルートの設計、1日あたりの訪問件数の想定、サービス単価の設定などを一緒に詰めていき、現実的なスケジュールで月間売上と経費を試算しました。
また、訪問車両は小型の軽バンを中古で購入予定であることを明記し、整備費や保険料も含めた資金計画書を作成しました。機材についても、シャンプー設備やカットセット、消毒設備などを細かくリストアップし、それぞれの見積額を記載しました。
開業後3か月程度は収支が安定しないことを想定し、運転資金として人件費やガソリン代、通信費なども含めた構成としました。
広告宣伝については、介護事業所や包括支援センター、病院、地域福祉施設にパンフレットを設置してもらうことを想定し、紹介営業と地域回覧板の活用も計画しました。ホームページ作成は外注せず、自作のテンプレート型ホームページを用いることで費用を抑える計画とし、その分、開業時に必要な物品整備に予算を集中させました。
面談対策としては、「どのようにお客様を確保するのか」「競合と何が違うのか」「自家用車での事故やトラブル対応はどうするか」といった実務面での質問への備えを徹底しました。事前にロールプレイを行い、ご本人の言葉で自信を持って説明できるように準備しました。
結果的に、提出後の面談を経て、日本政策金融公庫より250万円の融資が実行され、予定していた車両・機材・広告に必要な資金を確保したうえで、無事開業を迎えることができました。
お客様の声
自分で何とかなると思って、最初は一人で申請に挑戦しようとしたのですが、いざ書類を前にすると、何から書けばいいのか分からず、途方に暮れてしまいました。
事業内容は頭の中にあっても、それを「伝える」ためには、しっかりした準備と形が必要なんだと実感しました。
今回、親身に話を聞いてもらいながら、一緒に数字を出してもらい、自分では気づいていなかったリスクや可能性にも向き合えました。
面談の練習もしてもらったおかげで、本番でも自信を持って話すことができ、無事に融資が決まったときは本当に嬉しかったです。
機材や車もすべてそろい、開業後も少しずつですがリピートのお客様が増えてきています。自分の地元で、これまでの経験を生かして誰かの役に立てるというのは、何よりのやりがいです。
本当に最初の一歩を後押ししていただいて、心から感謝しています。