※本事例は個人情報の観点からモデルケースとして地域や一部内容を変更して記載しています。
ご依頼の経緯
ご依頼者様は理容師免許を取得後、長年にわたり大阪市内の理容室で勤務してきた経験をお持ちの方でした。新型コロナウイルスの影響で出勤数や顧客数が減ったことを契機に、「通えない人のもとへ自分が行く」サービスの必要性を強く感じ、訪問型の理美容サービスを立ち上げる決意をされました。
しかし、従来の理容室開業とは異なり、移動のための車両取得費、備品の購入、WEBサイトやチラシなどの広報費、そして開業から売上が安定するまでの運転資金が必要であり、ご自身の貯蓄だけでは資金が足りないという課題に直面。インターネットで創業融資について調べる中で、当事務所のホームページをご覧になり、「融資の専門家に頼みたい」とご相談をいただきました。
担当行政書士のコメント
ご相談を受けた当初、ご依頼者様は訪問美容の将来性や収益性にやや不安を感じておられましたが、話を伺っていくうちに、「地域の高齢者が通院・外出の負担を抱えている中で、自宅で散髪や身だしなみを整えられることの価値」を非常に真剣に考えている方であることが伝わってきました。
創業計画書の作成にあたっては、特に「地域ニーズの把握」と「収益モデルの現実性」に注力しました。摂津市内の高齢化率や要介護認定者数の統計、既存の訪問美容業者の分布状況を調査し、差別化ポイントとして「理容と美容の両方を扱える」「高齢者施設と提携可能」「定期訪問サービス」の導入を企画に盛り込みました。
資金計画では、軽バンの購入費、可搬式のシャンプー設備、感染対策用の備品類の初期投資に加え、広報費や開業後3か月分の運転資金を算定。必要資金の総額は約330万円とし、うち自己資金100万円、創業融資で230万円の調達を目指す内容で申請しました。
売上計画としては、1件あたりの単価3,500円×月100件をベースに、初月は70件、3か月後には安定的に月100件を見込む保守的な数値で作成し、収支の安定性と将来の拡張性(スタッフ増員や他市展開)にも言及。面談時に説得力ある資料として機能するように仕上げました。
最終的に、日本政策金融公庫からは希望額の230万円が承認され、融資実行から1ヶ月後には営業を開始。チラシ配布や地域の居宅介護支援事業所への訪問営業も功を奏し、開始3ヶ月で目標件数を達成。現在は週に5日、平均4〜5件の訪問をこなす安定した経営体制となっています。
お客様の声
昔から「髪を切ってもらうことが嬉しい」という高齢のお客様の笑顔が忘れられませんでした。店舗勤務の頃から、車椅子のお客様を介助しながら接客することもあり、いずれはこうした方の力になりたいと思っていたので、今回の訪問美容という形でようやく夢が叶いました。
ただ、開業の資金が本当に不安で、何から手を付けてよいかもわからず、ネットで調べるだけで時間ばかりが過ぎていました。そんな中で相談したところ、自分のやりたいことがどれだけ社会的に意義があるのかを丁寧に引き出してくださり、書類も想像以上に説得力のあるものに仕上げていただけました。
融資が通って車も手に入り、すぐに営業活動に集中できたのは大きかったです。おかげさまで「また来てね」「家族にも紹介したい」と言ってもらえるようになり、仕事のやりがいを強く感じています。地元・摂津の皆さんの笑顔をこれからも支えていきたいです。