※本事例は個人情報の観点からモデルケースとして地域や一部内容を変更して記載しています。
ご依頼の経緯
今回のご相談者であるAさんは、来日して10年近くが経過し、これまで技能実習、特定技能を経て、日本の生活に慣れたうえで独立を志していました。ベトナム料理店での勤務経験も豊富で、「いつか自分の店を持ちたい」という夢を持ち続けていましたが、日本語や資金面での不安から、なかなか一歩を踏み出せずにいました。
ある日、以前の勤務先の常連客から「福島区で空き物件が出ている」との情報を受け、Aさんは思い切って開業を決意。しかし、設備費・内装費など初期投資が高額になることが見込まれたため、日本政策金融公庫の創業融資を検討することになりました。ただ、制度の仕組みや必要書類、融資審査のポイントなどが全くわからず、当事務所に「外国人でも融資を受けられますか?」というお問合せをいただいたのが始まりです。
担当行政書士のコメント
創業融資は、創業間もない事業者やこれから起業する方に対して、無担保・無保証で融資を受けられる貴重な制度ですが、外国人の方にとっては日本語での書類作成や面談準備が大きなハードルになるケースが少なくありません。
まず、Aさんの経歴や事業経験、将来のビジョンを丁寧にヒアリングし、「なぜ福島区でベトナム料理店を開業したいのか」「どんなニーズを狙うのか」を明確に文章化するところからスタートしました。事業計画書の作成にあたっては、過去の勤務経験で得たスキルや実績を数値で示し、さらに近隣の競合調査やターゲット層の分析など、定量的なデータも盛り込みました。
また、日本政策金融公庫では、在留資格「経営・管理」の取得予定者に対しても創業融資が認められるケースがあります。そこで、在留資格変更手続きと並行して融資申請のスケジュールを調整し、整合性のある申請ができるようサポートしました。
融資審査において重要なのは、「実現可能性が高く、継続的な経営が期待できる計画かどうか」です。Aさんの場合、ベトナム料理の専門性とエリア特性(福島区の飲食需要の高さ)、そして本人の意欲と日本での定着実績が高く評価され、無事に500万円の融資決定に至りました。
加えて、融資後に開業までの支援として、税務署への開業届提出、保健所の営業許可申請、消防署との調整などの実務サポートも併せて行いました。オープン時には多くのベトナム人コミュニティの方々や地元住民も訪れ、順調なスタートを切ることができました。
お客様の声
長い間、日本で働きながら「自分のお店を持ちたい」と思ってきました。でも、創業融資のことも、日本で開業するために何が必要かも全然わからなくて、ずっと夢だけで終わるかもしれないと不安でした。
今回、行政書士の先生が一緒に事業計画書を作ってくれて、日本語の書類もすべて手伝ってもらえて、面談の練習までしてくれて、本当に助かりました。外国人の私にも、ちゃんと制度が使えるように説明してくれて、安心して進めることができました。
500万円の融資が通って、お店も無事にオープンできて、いま毎日がとても忙しいけど充実しています。お客様から「本場の味が楽しめて嬉しい」と言われたとき、本当にうれしかったです。これからも頑張っていきたいです。