※本事例は個人情報の観点からモデルケースとして地域や一部内容を変更して記載しています。
ご依頼の経緯
H社は都島区で地元密着型のベーカリーを運営しており、朝早くから地元住民や近隣の高齢者施設、保育園などへの配達も行っている地域に根差した事業者です。近年の人手不足の中、外国人の方をパート・アルバイトとして受け入れるようになり、今回対象となったベトナム人女性は、約8か月間の勤務で高い勤怠と接客姿勢が評価されていました。
「このまま長く働いてほしい」「戦力として正社員化したい」という気持ちがありながらも、雇用にかかる社会保険加入や待遇改善によるコスト増への不安もあり、制度活用による負担軽減を模索しておられました。当初はキャリアアップ助成金という制度の存在自体を知らず、インターネットで調べる中で当事務所を見つけ、正社員化に関する労務・助成金の支援を依頼いただきました。
担当社労士のコメント
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、一定期間継続して雇用してきた非正規労働者を正社員に登用した場合、1人あたり最大72万円(中小企業)が支給される国の制度です。今回のように、外国籍のアルバイトスタッフであっても、就労可能な在留資格があり、支給要件を満たせば対象となります。
まず初期段階で確認すべきは、対象者の労働契約の変遷と、雇用保険への適用状況です。ベトナム人女性の方は、特定活動46号(元技能実習生)の在留資格を保持しており、勤務日数・時間も雇用保険の加入要件を満たしていたため、制度上の対象者に該当しました。
H社では就業規則が未整備であったため、正社員と非正規の区別が不明確なまま運用されていました。助成金の申請にあたっては、正社員の定義(例:無期雇用、所定労働時間フルタイム、昇給・賞与・退職金制度のいずれかを導入)を明確にし、それに沿った雇用契約を新たに締結する必要がありました。
当事務所では、まず就業規則や賃金規程、労働条件通知書の整備を実施しました。そのうえで、正社員登用前の賃金記録や勤務実績を整理し、登用後の労働条件の変更に関する社内説明資料を整えました。また、社会保険の加入手続きや労働保険の変更届、キャリアアップ計画書の作成と提出、登用後の実績報告書および支給申請書の作成・提出までを一貫して支援しました。
特に注意すべきポイントは「計画書の提出よりも前に正社員化してしまうと支給対象外になる」という点です。今回は登用の意思決定が先行していたため、急ぎで計画書を作成し、提出期限に間に合わせて正社員化のスケジュールを調整しました。
その結果、無事に6か月の実績報告までを終えて支給申請が通り、72万円の支給決定を受けることができました。対象者本人も「安心して長く働ける職場になった」と大変喜ばれており、現在では後輩指導を行う立場で、戦力として定着されています。
お客様の声
外国人のスタッフを雇うようになってから、人材の幅が広がって助かっています。今回のベトナムの女性スタッフも、まじめで一生懸命で、正直どの日本人よりも丁寧な対応をしてくれていました。だから長くいてほしいと思ったのですが、正社員にすることで社会保険や待遇面のコストが増えるのが正直不安でした。
行政の制度を調べていて、キャリアアップ助成金という制度を知りましたが、自分で調べても内容が難しくて、結局どうしたらいいのかわからず、社労士の先生にお願いすることにしました。
申請に必要な条件を一から説明してくれて、社内の規定も全部そろえてもらって、手続きも全部代わりにしてもらえたので、私は登用の意思決定だけで済みました。しかも、もともと必要だった見直しもできたので、一石二鳥でした。
結果的に70万円以上の補助金が出たことも大きいですが、それ以上に「制度に乗っ取ってちゃんと登用できた安心感」が大きかったです。本人も本当に喜んでくれて、働く意欲も高まっていて、お願いして本当によかったです。